FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

最良の選択が「非認定施設」でのNIPT検査だという皮肉

日本産科婦人科学会の理事会、臨時総会、厚労省子ども家庭局母子保健課長通知を受けての新指針運用の停止から約4週間が経過する中、様々な動きが出てきているようで、いろいろな団体が意見開示や会合を行う話が伝わってきています。このように周りが騒いでい…

NHKハートネットTV『シリーズ 出生前検査』を見て 私の視点

遅ればせながら、先日放送されたNHKハートネットTVの『シリーズ 出生前検査』を録画しておいてあったものを見ました。まだ、「第1回 妊娠- その時、どうしたら?」しか見てませんが、感想を記しておきます。 ご覧になった方も多いと思うのですが、簡単に内容…

第55回日本周産期・新生児医学会学術集会 シンポジウム4「新型出生前診断(NIPT)が、優生思想に流れないために」 噛み合わない議論

2019年7月13日から15日の3日間にわたって、長野県松本市で開かれた、第55回日本周産期・新生児医学会学術集会に参加してきました。表題のシンポジウムがあり、流石にこのことに言及しないわけにはいかないでしょう。 本当のところ、今回の学会には当院から一…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。その3

続きです。 ・検査の広がりは妊婦の不安を煽り、安易な中絶につながりかねない。また、検査が一般化すると、妊婦は検査を受けるように重圧を受けるし、異常のある子を産み育てることに対して批判的な風潮や自己責任論が広がる懸念がある。 こういう論調は、…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。その2

前回からの続きです。 検査の実施に反対する意見に関して、私が感じている違和感、論点がずれていると思う点について、解説していきます。 ・胎児の染色体異常が見つかった結果、ほとんどの妊婦が中絶を選択する現状がある。これが広がることは命の尊厳を損…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。

あっという間に7月になっていました。毎日の仕事に追われつつ、現状をなんとかできないものかと考え続けていますが、突破口が見えてきません。 NIPTの新指針が6月22日の日産婦理事会において議決され、臨時総会で報告されてから、2週間が経とうとしています…

意見を言ったり、記事を書いたりしている人たちに、出生前診断の全貌が見えているか?

NIPT実施の新指針に関連した学会の会見以来、数本の記事を書き続けてきましたが、書きながらいろいろ考えるうちに、一つの疑問が湧いてきました。 それはこういうものです。 「出生前検査について論じている人たちの多くは、もしかしたらダウン症候群のこと…