FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

第55回日本周産期・新生児医学会学術集会 シンポジウム4「新型出生前診断(NIPT)が、優生思想に流れないために」 噛み合わない議論

2019年7月13日から15日の3日間にわたって、長野県松本市で開かれた、第55回日本周産期・新生児医学会学術集会に参加してきました。表題のシンポジウムがあり、流石にこのことに言及しないわけにはいかないでしょう。 本当のところ、今回の学会には当院から一…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。その3

続きです。 ・検査の広がりは妊婦の不安を煽り、安易な中絶につながりかねない。また、検査が一般化すると、妊婦は検査を受けるように重圧を受けるし、異常のある子を産み育てることに対して批判的な風潮や自己責任論が広がる懸念がある。 こういう論調は、…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。その2

前回からの続きです。 検査の実施に反対する意見に関して、私が感じている違和感、論点がずれていると思う点について、解説していきます。 ・胎児の染色体異常が見つかった結果、ほとんどの妊婦が中絶を選択する現状がある。これが広がることは命の尊厳を損…

妊婦が置かれている現状に目を向けずに論じていませんか? 論点のズレを認識してほしい。

あっという間に7月になっていました。毎日の仕事に追われつつ、現状をなんとかできないものかと考え続けていますが、突破口が見えてきません。 NIPTの新指針が6月22日の日産婦理事会において議決され、臨時総会で報告されてから、2週間が経とうとしています…

意見を言ったり、記事を書いたりしている人たちに、出生前診断の全貌が見えているか?

NIPT実施の新指針に関連した学会の会見以来、数本の記事を書き続けてきましたが、書きながらいろいろ考えるうちに、一つの疑問が湧いてきました。 それはこういうものです。 「出生前検査について論じている人たちの多くは、もしかしたらダウン症候群のこと…

誰のための先送り?妊婦不在、専門医不在の議論で進んでいくこの国の出生前検査は大丈夫なのか。

昨日から連続して記事をあげていますが、いろいろな情報も入ってきていて、NIPTの件が頭の中のほとんどを占め、落胆で潰れそうになりつつ、診療を頑張っています。 もう一度新指針に目を通してみました。それにしても長々といろいろ決め事があるものですね。…

日本の妊婦には、「知る権利」が保障されていない!? 指針に見る彼我の違い。

新指針の中の記載には気になるもの(ツッコミを入れたくなるもの)が多くあるのですが、特に引っかかる文言がありましたので、今回はこの記述に焦点を当てたいと思います。それは、[6]NIPTに対する医師、検査会社の基本的姿勢です。ここには、こう書かれて…

NIPTの議論のなかに透けて見える本音。解説しましょう。(1) まずは歴史的流れから

今回の日産婦の発表を受けて、新指針や各学会の声明など、もう一度読み直してみたりしているのですが、こういった医学・医療の世界の人たちがどのように考えているのか、一般の方々には今ひとつわかりにくいのではないかと思います。みんな尤もらしい内容を…

学会同士のいがみ合いで重い腰を上げた厚労省。どのような審議が行われるのでしょうか。

さて、昨夜のNHKニュースです。 厚生労働省は、日本小児科学会などが実施施設の拡大に反発していて、「混乱を避けるためには国が対応する必要がある」として、この夏にも検討会を設置して、検査の在り方を議論していくことを決めました。これを受けて日本産…

日本産科婦人科学会が出した、“新しい「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」に関するお知らせとお願い” を読んで

さっそく、昨日発表された『お知らせとお願い』を読んでみました。 先走っていた毎日の記事では、新指針の決定は見送る方針と書かれていましたが、そうではなくて、臨時理事会では新指針が承認され、それに引き続き行われた臨時総会で報告し、了承が得られた…

厚生労働省がNIPTのあり方を議論する検討会を今夏に立ち上げるそうです

3週間ほどブログの更新が滞っていましたが、この間、いくつかの記事を書いては最終的にまとめられず、書きかけのままのものが溜まりつつあります。しかし、表題のニュースが出ましたので、これからしばらくはこの話題で行くことになると思います。今書き溜め…

出生前検査は、中絶することが目的の検査なのか?

私にとって、忘れられない出来事があります。5,6年ほど前のある学会での出来事です。その学会の中の一セッションのテーマが、妊娠中における胎児スクリーニング検査で、4題ほどの発表の一つを私が担当しました。私は、当時の職場での検査データをもとに発表…

出生前検査に関して、あまり知られていない日本だけの特殊現象がある

NIPT(母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査)の指針の改定に関して、来月には日本産科婦人科学会理事会からの発表があると予想され、またこの件についての議論が沸き起こることを予想していますが、これまでの取り上げられ方を見ていて、どうもあまり気…

NIPTよりも超音波検査を規制した方が良いのではないか?

NIPTの話題で忙しくなっていますが、今週末ちょうどタイムリーに、日本超音波医学会第92回学術集会で、関連したワークショップがあり、登壇することになりました。 これは、この学会の「特別プログラム 産婦人科」の中の一つとして行われる、ワークショップ …

日本産科婦人科学会宛に、公開質問状を送付しました。【全文公開】

3月にいくつもの記事を連続して書かせていただいた、日本産科婦人科学会の「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)ですが、聞くところによると、倫理委員会および理事会を通過すると6月には(案)がとれて、会員に周知される形となるよ…

実際に出生前検査を専門的に扱っていてはじめてわかる、NIPTの今ある問題点と解決策

長い連休を経て、時代は平成から令和へとかわりました。この新しい時代に、日本の女性を取り巻く問題は大きく変わらなければならないと思います。今、様々な方面で、女性の権利やそれに関連する社会の問題の議論が表に出るようになってきましたが、私のもと…

9割が中絶という数字、どう捉えられているのだろうか

3月には連投していたこのブログ、その後日本産科婦人科学会の準備などもあって、放置状態になってしまっていました。本来であればこの学会の話題を記しておくべきなのでしょうが、いろいろと忙しくなってブログを更新する時間があまり取れず、、、気づけば今…

「中絶は早い方が良い」は本当か?

妊婦健診で、胎児に何らかの問題があると指摘されて当院に相談してこられる方の中で、以下のようなケースが散見されます。 ・胎児が小さい方が安全に中絶できるので、早くした方が良いと言われた。 ・中期中絶は危険なので、中絶するなら12週よりも前に何と…

胎児の染色体検査結果を得るのには、2〜3週間かかるというのは本当か

受診予約の問い合わせや、相談のメールをいただいたりする中で、以前から感じていたことの一つに、染色体検査を行うための羊水穿刺などが、あまり積極的に行われない傾向があることがあります。特に、「今から検査しても中絶には間に合わない」という説明や…

NIPT指針改定案の周知は十分か?

NIPTの改定案に対するパブリックコメントの募集。あと1週間で締め切られますが、その周知徹底は十分なのでしょうか。広い範囲からの意見が集められるでしょうか。 これに関して、甚だ疑問に感じさせられることがありました。 因みにパブコメの案内は以下↓ dr…

NIPT新指針で「基幹施設」となる現認定施設の態勢は十分なのか

NIPT新指針問題、発表当初のインパクトがなんとなく収まって、少し静かになっている感じがしていますが、毎日出生前検査・診断の現場で多くの妊婦さん達と向き合っている私たちは、毎日このことを意識しています。 この新指針案では、NIPT実施施設の幅を大き…

NIPTの指針改定問題に関連したマスコミ社説に感じる違和感

NIPTの指針改定問題。いろいろな意見が各種団体やマスコミ社説などで出てきていますね。 私自身も今回の日産婦が示した改定(案)には、いろいろと問題があると思っている一人なのですが、各種団体やマスコミが出している批判的な意見には必ずしも賛同できな…

東京逓信病院に『東京ダウンセンター』開設

当院からほど近い場所に、東京逓信病院があります。この病院の小児科部長・小野正恵先生は、長年にわたり、ダウン症候群の方たちの診療を行い、医師として、またときには伴走者として、いろいろな方たちと関わりを持ってこられました。そんな中で、ダウン症…

NIPT実施の新指針(案)の対案を作りました。

日本産婦人科学会(日産婦)からNIPTの新指針(案)が提示されて以来、連日のようにブログを更新しています。たいへんな危機感を持っています。 しかし、微妙に疎外感を感じるのは、私たちは一般的な議論(この検査を広げるべきなのか規制すべきなのかという…

日本産婦人科学会が、NIPT実施施設の改定案についてパブリックコメントを募集しています。

NIPT実施施設の改定案について、日本産婦人科学会がパブリックコメントを募集しています。 f.msgs.jp このリンクのページから、改定案に飛ぶこともできますが、ここにもリンクを貼っておきます。 https://fyu.cdn.msgs.jp/fyhu/fyu/shishin2019.pdf ぜひ一度…

日本ダウン症協会の意見表明

公益財団法人日本ダウン症協会(JDS)が、以下のような文書を出しています。 3月1日付です。 NIPT指針改定をめぐる動きについて http://jdss.or.jp/project/20190301jds.pdf 大変わかりやすい解説です。 さすがにこの問題に当事者の立場で長年向き合ってこら…

ついに出た日産婦の指針改定案。そしてつまはじきにされる私たち。

昨年の10月に以下の記事を書きました。 混沌としてきたNIPT事情。どうする日本医学会、日本産科婦人科学会。 - FMC東京 院長室 それから7か月。 ついに日本産科婦人科学会が新たな指針(案)を出してきました。 以下、時事通信の配信記事です。 www.jiji.com…

『新出生前診断に施設拡大案、学会 研修受ければ可能に』という見出しの記事が出ました

マスコミ各社はNIPTの呼び名をこれまでの『新型出生前診断』から『新出生前診断』に変更する事にしたんでしょうか。まあそれはどうでもいいい話ですが、いい加減この『出生前診断』という言葉の誤用をやめてもらいたいものです。さて、表題の記事ですが、共…

胎児超音波検査を行う時期に、医師個人の価値観が反映されている。

ホームページをご覧になるとわかると思いますが、当院で設定している胎児超音波検査には、妊娠初期の超音波検査と妊娠中期の超音波検査があります。この二つは、海外で行われている検査に照らして言うと、前者が、第1三半期の検査(First trimester screenin…

年頭所感:ある枠組みにまとめて同一視してしまうのはもうやめよう

皆さま、新年あけましておめでとうございます。 クリニックは、4日より診療を開始しました。 年末年始を脈絡なく過ごしたために、大事な執筆作業が思うようにはかどらなかったので、ブログの更新も途切れ途切れになりますが、年頭にあたって、このところ考え…