FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

受診者さんからの手紙:ヤコブセン症候群を持つ子のお母さんより

先日、当院で検査をお受けになったのちに、赤ちゃんを出産された方から、感謝のお手紙をいただきました。このようなお手紙は、スタッフ皆にとって大変励みになります。 この方は、5年前に出産された男の子に、『ヤコブセン症候群』という希少な染色体微細欠…

前途多難。(どうすればこの国の出生前検査の現状が改善できるのだろうか)

もう8月も終わりに近づいてきたわけですが、また暑さがぶり返してきて、体力を消耗する日々です。そんな中、最近たてつづけに悪い意味で驚くべき相談事例があり、気力まで消耗しそうになっています。もう本当にこの国は今後大丈夫なのか、この国でやっていけ…

東京医大入試問題を機に、医療界の問題、医療の仕組みの問題など、もっとみんなに知ってほしい。

いま世間を賑わしている、東京医大の入試における女性差別問題。いろいろな立場の人が、様々な意見を開示しておられますが、当事者ともいえる医師、それも大学医局の仕組みの中での苦労を知る医師からの発言が、問題の本質に踏み込んでいて、この問題が単な…

日本の妊婦は過剰に安静を強いられている!?

当院を受診される方や診療予約をされる方のほとんどが、普段は別の施設で妊婦健診を受けておられる方ですので、施設や医師によって、その診療方針や指導方法にはさまざまな違いがあるのだなあと感じます。そんな中で、全体的な傾向としてこういうことが良く…

女の子?男の子? に関連して:その判断方法に隠れているジェンダーギャップ

前回、超音波検査での男女判定についての記事を書きましたが、この男女判定、世の中にはいろいろな情報が出回っているようなんです。 よく聞くのは、妊婦さんのお腹の形による違い。お腹が前に突き出していると男の子、横に広がった形だと女の子だというので…

女の子?男の子?

当院を受診される方の多くは、胎児に何か異常が見つかるかもしれないという不安を漠然と抱えておられますので、医師の一挙手一投足に敏感に反応されます。胎児を観察する際に、より正確な断面でより確実な診断をしようと思うと、状況によってはこれで確実!…

説教をする医者、優しく諭そうとする医者

先日来院された方がおっしゃっていたのですが、通院中の産院で出生前検査について相談しようとしたところ、医師から、「そのような検査を受けた結果、何か問題が見つかって、妊娠を継続するか中絶するかの判断を迫られることにつながる可能性があるけれど、…

考え方は人それぞれ。自分基準で決めてもらっていいんですが、、、

カタい話が続いたので、ここらで少し日常の話題を。と言っても、どうも私の文章自体がカタイのか、「ブログを読んだんですが、難しくって、、」という感想をいただくことがけっこう多いので、反省してます。(と言いつつ、今後もクソ真面目に続けるつもりで…

遺伝カウンセリングは中絶の歯止めではない。

少し古い記事(1ヶ月ほど前のもの)なのですが、ちょっと気になる記載があって、このブログで取り上げなければとメモしておいたものがあります。以下の記事です。 学会、新出生前診断指針見直しへ 年度内に意見取りまとめ - 共同通信 2018年6月23日配信 this…

第54回日本周産期・新生児医学会 違和感の正体が少し見えてきた - 2

7月8日〜10日に開催された、日本周産期・新生児医学会の話題の続きです。 この学会は、もともとは日本新生児医学会という名称の学会でしたが、新生児管理の話題だけでなく、新生児が生まれる前段階である周産期管理の話題もテーマとなり、周産期の話題を中心…

第54回日本周産期・新生児医学会 違和感の正体が少し見えてきた - 1

7月8日〜10日の3日間、第54回日本周産期・新生児医学会が開かれていました。私は10日にあったシンポジウム10『Inter-professional network 出生前診断を考える』に、シンポジストの一人として登壇しました。 このシンポジウムは、自分にとってもクリニックに…

診断が確定しないうちに人工妊娠中絶を選択することは許されないことなのか。

出生前診断について語る際に、避けて通ることのできないことが、人工妊娠中絶です。人工妊娠中絶は、一定の条件下で合法的に認められており、わが国では年間168,015件(平成28年度厚生労働省衛生行政報告例)行われています。 (ちなみに全体としては、長年…

検査を規制しようという発想は、どこから出てきて何が間違っているのか。

5月21日の記事の最後で予告していたテーマについて、ようやくまとめる時間ができました。6月の頭に、二つの学会(日本家族性腫瘍学会と日本超音波医学会)の学術集会がいずれも神戸で開催され、前者は当院の田村が会長という大役でしたし、後者でも私が座長…

某無認可クリニックの全染色体検査:わかってやってるんでしょうかねえ

前回エントリーの最後に、次は検査を規制するという考えのどこが間違っているかについての論考を行うと予告し、途中まで文章を書き始めていたのですが、最近診療の場で気になるケースが連続したので、先にそれについて書きたいと思います。 私のクリニックに…

NIPT:臨床研究の終了の話は進んでいるのでしょうか?

日本産科婦人科学会臨時総会・学術集会が終了して1週間がたち、産婦人科医療の現場も落ち着きを取り戻している気配の今日この頃です。話題に上っていたNIPTの臨床研究の終了については、産婦人科学会では決定事項として日本医学会に投げられ、約1ヶ月で結論…

日本産科婦人科学会に参加して - 親近感と疎外感

先週末、日本産科婦人科学会第70回学術講演会に参加してきました。同時開催された臨時総会には残念ながら参加できませんでした。(なお、私は以前の大学勤務時代には代議員を務めていましたが、いまはヒラ会員です。)今回は、東北大学の八重樫教授が会長を…

子宮の中なんて、狭くっていいんです。

ゴールデンウィークで、クリニックもお休みをいただいており、私ものんびり過ごしています。そのせいで、ブログの更新もサボり気味になってしまいました。 来週末には日本産科婦人科学会が控えており、私たちにとっても重要な動きがあることが予想されていま…

妊娠中絶の選択を与えない医師たち

前回、胎児の両親(妊婦とそのパートナー)がまだ希望を捨てたくない場合でも、むしろ周囲の人たち(家族や産婦人科医)が、「早いほうが負担が少ない。」などと言って、妊娠中絶を勧めるケースがあることについて書きました。 今回は、その逆のパターンにつ…

妊婦さん自身にはなくても、周囲にはあるかもしれない“安易な中絶” (2)

出生前検査・診断を専門にしていると、“安易な中絶”と一括りにして語られるものの中に、いろいろな事情があることがわかります。それは個人的な事情だけではなく、制度や社会の問題も含めた、幅広い側面を持っています。 NTが厚いと指摘されたケースを例に考…

妊婦さん自身にはなくても、周囲にはあるかもしれない“安易な中絶” (1)

先日、日産婦の理事会でNIPT(マスコミの言う“新型出生前診断”)が臨床研究を終了して一般診療になることが決定したことに関連し、以下の記事を書きました。 NIPT(新型出生前診断)、今後の実施体制は? - FMC東京 院長室 この中で紹介した、記事 新型出生…

NPO法人 親子の未来を支える会 のイベントに参加しました。

以前より交流のある、林伸彦医師(現在英国FMFに留学中)が理事長を務める、NPO法人 親子の未来を支える会 https://www.facebook.com/familyandbaby/ のイベント、ピアサポーター・ピアコネクター意見交換会に参加してきました。 1. イギリスの妊婦管理、出…

当院の医師たちが白衣を着ていない理由について

開院時より当院での診療を担当している宋美玄医師が、丸の内にクリニックを開設して半年が経ちました。ということで、久しぶりにホームページを覗いてみたところ、あることに気づいたのです。 www.moricli.jpあ、そうか、美玄さん(うちではこう呼んでいます…

今日は、『世界ダウン症の日』でした。

今日、3月21日は、国連が制定した『世界ダウン症の日:World Down Syndrome Day』です。 各地でさまざまな啓発イベントが行われたようですね。まだしばらく行うものもいくつかあるようです。 世界ダウン症の日2018公式サイト | 公益財団法人日本ダウン症協会…

NIPT(新型出生前診断)、今後の実施体制は?

先日、NIPTに関するニュースについて言及したところ(日産婦、“新型出生前診断”を一般診療として実施する方針 - FMC東京 院長室)ですが、この件についてはいろいろなところで話題になっていて、少し注目されてきているようですね。2日前にも、以下のような…

「命」について(人はいつから人なのか、など)

「新型出生前診断」と同様に、マスコミが好んで使う言葉で気に入らないものの一つに、「命の選別」があります。これを「気に入らない」などというと、反発されそうなので、丁寧に論考しないといけないと考えているのですが、まずは「命」について考えてみた…

日産婦、“新型出生前診断”を一般診療として実施する方針

いろいろと忙しくて更新をサボっていたら、前回更新した日(3/4)に表題のニュースが出ていたようですね。私自身もこの学会の会員ではあるものの、単なる一会員で中枢には関わりがありませんので、動向が外部記事などからしか伝わってきません。記事を拾って…

なぜ日本のマスコミは無痛分娩に対して、否定的な報道が多いのか?→ 正しい情報を得よう。

先日、当院を受診された方が、「無痛分娩を希望しているのだが、事故報道などを見て家族が反対している。」とおっしゃっていました。 どうも無痛分娩に関してマスコミ報道を見ていると、悪いイメージばかり強調されているようなきらいがあって、なかなか正確…

流産を止める魔法の薬などない!- 本当に必要な人のみが、本当に効果のある治療を受けるべき。

前にも書いたのですが、「不育症」治療がなぜか徐々に広がりつつあるようです。 不育症患者が増えている!? ーーつづき - FMC東京 院長室 不妊治療の末、妊娠出産に至ったという方のブログやフォーラムでの繋がりが、不妊・不育領域の新たな検査や治療につ…

なんでも「安静」「安静」っていうの、もうやめてもらえませんかね。切迫流産で安静と言われても当院の診療は受けられます。

もうね、本当にやめてほしいです。 自宅安静を指示されたから、受診できません。予約キャンセルしますっていうのが、けっこう多いんですが、そんなことでキャンセルしなくても良いから来てくださいって言いたいです。でも、かかりつけ医からそう言われたら、…

実はかなりハードルが高い人工妊娠中絶(後編)

前回(実はかなりハードルが高い人工妊娠中絶(前編) - FMC東京 院長室)の続きです。以下の2つについて言及していきます。 3. 受け入れ施設のハードル 4. 社会的ハードル 3. 受け入れ施設のハードル 妊娠12週までの人工妊娠中絶を扱う施設は数多くあるので…