FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 2: NYの43例・妊婦も重症化する率は同じ

2つめは、4月9日にオンライン上で読むことが可能になった、AJOG MFM(米国産科婦人科学会誌・母体胎児医療)にアクセプトされた論文(速報)です。 COVID-19 infection among asymptomatic and symptomatic pregnant women: Two weeks of confirmed presenta…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 1: 108例のまとめ

妊娠と新型コロナウイルス感染との関連について、複数の論文が発表されてきました。 まだ速報段階のものが多いですが、紹介していきたいと思います。 この記事から3編連続でお伝えします。 スウェーデンはLund大学、Skåne大学病院の産婦人科医と新生児科医が…

妊婦さん対象 新型コロナウイルス感染症アンケート

コロナ禍の状況下で、妊婦さんたちはいったい何に困っておられるのか? もっとも問題になっていることは実際何なのか? 当事者の声を聞いて、支援に役立てようという目的で、ニンプスラボと河合蘭さんが共同でアンケート調査への協力を要請されています。 こ…

緊急事態宣言発令 私たちはどう対応すべきなのだろうか

昨日(2020年4月7日)、安倍総理大臣が東京都を含む7都道府県を対象に、『緊急事態宣言』を発令しました。これに伴い、東京都では、緊急事態措置を実施します。 私たち医療機関は、ライフラインに関わる業務なので、基本的には業務をストップすることなく続…

もし妊婦さんが新型コロナウイルスに感染したら、産科クリニックはどう対応する?

前記事の最後の部分で、新型コロナウイルスに感染した妊婦さんが出たら、どの医療機関でどう扱うのか、具体的な対処方針がわからないとい書きましたが、本日付で、日本産婦人科医会より会員に向けて、対応方法を知らせる文書が発出されました。 これによると…

0歳児の新型コロナウイルス感染の報告。どこから感染したのか?

書きかけの項目がいくつか残っているのですが、どうもそれどころではなくなってきて、新型コロナ関連の情報収拾で頭がいっぱいになってきつつあります。最前線で対応しておられる医療従事者の方々には、頭が下がる思いです。 私は、災害医療や感染症の専門家…

新型コロナウイルスと妊娠に関する情報

前エントリーの続きは現在執筆中ですが、その前によりタイムリーな情報を。 ISUOG (International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology: 国際産科婦人科超音波学会)が、妊娠中の方向けに新型コロナウイルスと妊娠に関する情報をまとめたリ…

着床前診断について議論してきた人たちの倫理観に果たして一貫性があるのか?(その1)

先日、すごく残念なことがありまして、書き残さずにはいられないのです。 それは何かというと、着床前診断の指針の問題です。 着床前診断(preimplantation genetic testing: PGT)には3種類あり、それぞれ、以下の名称で呼ばれています。 ・PGT-M (monogeni…

NZで妊娠中絶が犯罪から医療行為に 40年ぶりの法改正

表題のニュースが配信されました。 これは、昨年8月にこのブログでも取り上げた法案が、可決されたものです。 ニュージーランド政府が中絶に関する画期的な法案を提出 - FMC東京 院長室 当初は、この法案の可否についての投票は執り行われないと予測されてい…

ネット記事は、何を目的としているのか。ただセンセーショナルに煽るのでは、人を不安に陥れるだけで、害でしかない。 - 時事メディカルの記事『中国で重症妊婦が死産』の問題点

新型コロナウイルス関連で、いろいろな情報が飛び交い、すべての国民が不安な日々を過ごしていることと思います。しかし、その不安の多くの部分が、不正確な情報の拡散に起因しているように思われてなりません。先日も、JBpressというメディアが、とんでもな…

『旧』施設認定・登録部会から届いた文書への反論を記します。

前記事↓で公開した文書への反論です。 drsushi.hatenablog.com本当は、返信を送って議論を続けたいのですが、前記事にも記載したように、既に議論の相手がいませんので、本当にやり場のない気持ちを込めて、せめてここで吐き出させてもらおうかというところ…

旧 日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会から返事が来ました。

表題のように、返事が届きました。 この書類、1月20日付なのに、届いたのが3月4日なんです。このタイムラグは何だったのでしょう?どなたか、3月2日にアップした私のブログ記事を読んで、慌てて送ってきたのでしょうか? 何を隠そう、3月4日は私の誕生日だっ…

私はいつまでガマンを続けるべきなのか。そろそろキレてもいいですか?

世の中、新型コロナの話題で持ちきりで、厚生労働省もこれにテンテコ舞いなことと思いますが、NIPT方面はどうなってるんでしょうかねえ。 まあ調査が行われているようなんですが、これがどれほど有効なものなのか、結局どういう結論に持っていきたいのか、大…

「無脳症」のわが子を宿して ー 今ここにある出生前診断

先日、宮城県立こども病院産科科長/東北大学大学院医学研究科教授併任の室月淳医師が、この度上梓された、『出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」』(集英社新書)が、届きました。 彼は、常日頃から連絡を取り合って、情報交換したり議論を交…

1月18日読売新聞夕刊 『変わる早産対策』 この国独自の産科医療は変われるのか?

読売新聞夕刊で、早産予防治療についての話題が取り上げられていました。これまでこのような話題が全国紙レベルで載ることはなかったので、現状を変えるきっかけになるという期待感を持つ医師もおり、攻めた記事だと評価されています。 日本で行われている『…

ブログ読者の方から届いた一冊の短編小説

作家と編集者とデザイナーがチームを組んで、2日間で短編小説作品を仕上げ、その出来を競うNovel Jamというイベントで、最優秀作品賞を受賞された紀野しずくさんが、受賞作品を届けてくださいました。 『ふれる』という作品です。流産を複数回経験されたのち…

日本の産婦人科のツートップが、私と同じ見解であることがわかりました。

昨年会員になった、日本産婦人科医会から、新年最初の会報(2020年1月号)が届きました。(私は以前は長いこと会員だったのですが、ある時ふと疑問を感じて退会していました。しかし、開業医となった今、加入しておくことの必要性もあるかもしれないと思い、…

【全文公開】「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会宛に返答を送付しました。

あけましておめでとうございます。 昨年のクリスマスイブに届いた文書(以下の記事参照)に対し、返答および疑問点を記した文書を、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会 部会長 久具宏司様宛…

あらためて考える。出生前検査・診断は不安ビジネスなのか。

年末も押し迫ってまいりました。クリニックは27日が仕事納めで、夜には忘年会を行いました。この年末はこの一年のことやこれまでの歩みなどを振り返り、来年に向けての考えを新たにするよい機会になります。 とはいえ、年末に「母体血を用いた出生前遺伝学的…

これはクリスマスプレゼントなんでしょうか?「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会より文書が届きました。

本日付で、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会から照会文書が届きました。 これは、昨年7月30日付で当院より提出した「施設登録申請書」に対する照会です。1年以上経っても全く何の反応もあ…

日本人類遺伝学会第64回大会に参加して(追加)。本気で考える、私たちはいつNIPTを開始すべきか。

先月6日〜10日に長崎で開かれた、日本人類遺伝学会第64回大会および、全国遺伝子診療部門連絡会議。前エントリーでまとめ記事を書きましたが、もう一つ書き残しておかなければならないことがあります。 実はこの時が初めてではなく、これまでにも何度もあっ…

寛容さとはなんだろう - 人類遺伝学会第64回大会および全国遺伝子診療部門連絡会議に参加して

先日(2019年11月6日〜10日)、日本人類遺伝学会第64回大会および、全国遺伝子診療部門連絡会議に参加してきました。日本人類遺伝学会は毎年参加している学会で、当院から2名の評議員(中村靖・田村智英子)を出しています。もともとの私の専門領域である産…

Frau記事 出生前診断で「産まない決断」をした母の悲痛 を読んで

いろいろと忙しくしているうちに、あっという間に年末になってしまいました。気づけばこのブログも、11月は記事を出せないままになっていました。全くなんの話題もなかったわけではなく、私たちの周りでは日々いろいろなことが起こっているのですが、きちん…

一体いつルールが変更されたのですか? なぜ、専門家が冷静さを維持できない事態に陥ってしまったのか。

当院を受診される前に、すでに様々な医療機関において説明を受けたり、検査そのものを受けたりしておられる方がいらっしゃいます。NIPTに関していえば、認定施設で受けた方もいれば、認定されていない施設で受けてきたという方もおられます。 少し前までは、…

再考しよう。人工妊娠中絶を行うことが可能か否かを妊娠時期で規定することは適切なのか?

先日、朝のNHKニュースで、早産児の生育限界についての話題が放送されていました。 変わる? 赤ちゃん“命の線引き”|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本 未熟な状態で生まれてきた赤ちゃんが、医療の進歩によって、しっかりと生きていくことが…

日本は出生前診断アレルギー状態のままで良いのか

英国発の新しい記事が出ました。 medicalxpress.com鎌状赤血球症の胎児診断を非侵襲的に可能にする技術が、実用化に近づいている。 という話題です。 NIPT (noninvasive prenatal testing) ではなく、NIPD (noninvasive prenatal diagnosis) なのです。 鎌状…

学会の認定を受けずにNIPTを行なっている医療機関が、X,Y染色体の数的異常の検査を行うことは大きな問題

このところちょっと学会の裏事情的な話題ばかりでしたが、それは一段落として、もう少し実際の診療に関わる話をしていきたいと思います。 現在、学会認可の施設でのNIPT検査は、3種類のトリソミーのみに限定されています。NIPTコンソーシアムからは、施設認…

冷たくあしらわれているのは1度だけではない。

前記事で公開した文書ですが、業界内部では物議を醸しているようです。 この文書の配布先について、少し細かくわかってきました。 この文書は、3ページからなるものです。学会の将来を考えての提言という形をとった1ページ目、別紙資料としての2ページ目、そ…

学会は純粋な学術論争の場たり得るか。日本人類遺伝学会で起こっていること。2. 文書を公開します。

前エントリーで予告しました、日本人類遺伝学会前理事長の福嶋義光 信州大学医学部名誉教授が配布された意見表明文書を全文公開いたします。 なお、この記事の理解のために、前記事および前々記事に目を通していただけると幸いです。そうでないと問題点がさ…

学会は純粋な学術論争の場たり得るか。日本人類遺伝学会で起こっていること。1. 序説

世間のみなさんにはピンとこない話かもしれませんが、、、いま日本人類遺伝学会では、理事・監事選挙がはじまっています。これに関連して、怪文書(?)が回ってきました。これが業界内部では物議を醸しているのです。 本当は私、政治的な争いとかには興味が…