FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

超音波では何がどう見えているのか?(2016年10月8日)

私たちは、胎児の観察の時に、できるだけリアルタイムでわかっていただけるよう、解説を加えながら超音波検査をおこなっています。そのときによく、以下のようなことを聞かれます。

医師「これは胎児の頭の部分を見ているんですよ」
受診者またはご家族「これは、上から見ているんですか?」
超音波検査のうち、私たちがよく使っている超音波断層法(いわゆる2D超音波)で表示されている画像は、断面です。私たちは、胎児の向きやそのときの条件に応じて、どちらが右でどちらが左であるか、どちらが腹側でどちらが背中側か、どちらが頭側でどちらが尾側か、といった視点でみています。もちろん、たとえば人が立った姿勢で水平な断面(軸位断面)を頭側から見ているのか、尾側から見ているのかの判断によって、右か左かといったことがわかりますので、「上から見ているんですか?」というような質問が、必ずしもおかしな質問というわけではないのですが、毎日多くの超音波検査を行うなかで、上記のような会話がすごく多いことから、どうも一般の方々は、画像をわれわれとは違った見方で捉えておられるのではないだろうかということを感じるようになりました。この質問、すごく答えにくいんですよねえ、私たちはそういう視点で見てないから。

そもそも普通に生活していて、人の体を断面で見るというようなことはありませんからねえ。日常生活で目で見た見えかたで考えるのが一般的でしょう。私たち医療者は、職務の上で、超音波だけでなく、CTスキャンMRI検査の画像をみますので、断面をみるということに慣れ親しんでいるのです。だから、「こういう検査ではそれが当たり前でしょ」といったような感覚になってしまっている。しかし、医療者以外の方々が、人間の断面を見るなんてこと、ありませんもんねえ。せいぜい魚の切り身ぐらいなもんじゃないですか、断面見るときって。いきなり超音波画像を見せられても、スッと入ってきませんよねえ。それがやっとわかりました。よほど丁寧に説明してあげないと、何が何だかわからないままになっているのではないかなあと。でも医者が人の中身について説明するのって、つまらないかもしれませんねえ。

3D / 4Dの表面表示のほうがわかりやすいのは、当たり前ですよね。目で見たままという感じですから。でもね、表面表示では中が見えないんですよ。私たちはどちらかというと中身を見るのが大事なんです。わかりにくいつまらない検査のほうが多くて申し訳ないと思います。でもやっぱり中身が大事なので、そこは我慢していただきたいのです。