FMC東京 院長室

FMC東京クリニック 院長のブログです

たいへん刺激的な国際学会

ウィーンで開かれている、27th World Congress on Ultrasound in Obstetrics and Gynecology(世界産科婦人科超音波学会学術集会)に参加しています。

世界のエキスパートの技や知見を学べる機会として本当に有用な学会なのですが、その中で、あまり国内の学会では見られないような、たいへん刺激的なディスカッションがありました。

2011年から2014年にかけてイギリスの16の胎児診療センターが参加して行われた、前方視的コホート研究「MERIDIAN trial」の結果を受けて、超音波検査・診断はどのようになっていくべきかというテーマのセッションでした。この研究は、胎児の中枢神経系の異常の診断において、超音波診断とMRI診断との成績を比較したもので、MRIの優位性が示されており、この結果に関連した論文が、世界的に権威の高いことで知られている医学誌The Lancetに掲載されています。この結果に、超音波診断の世界で著名な医師達が噛み付いたのです。

学会場でこの研究結果に対する疑問点について述べた先生方(一人はイタリア、もう一人はイスラエルの医師でした)の注意喚起は、すでに同じThe Lancetにも掲載されているのですが、それだけでは足りなかったのか、国際学会の場でこれでもかとこの研究に対する疑問点・問題点を挙げつらい、ついにはイギリスの胎児診療センターの医師達は、もっと胎児の脳神経の超音波診断について、しっかりとしたトレーニングを積むべきだとまで言いだしましたが、今回の会場は東ヨーロッパということもあってか、全体に好意的な反応でした。この後、イスラエル人の座長と会場から質問に立った医師との間で熱い議論になり、終了時間が伸びてしまったのも驚きでした。権威のある医学誌に乗った論文だからといって簡単に受け入れてしまわず、しっかりと疑問点をぶつけ、堂々と主張する姿勢は素晴らしいと感じました。こういう議論を経て、科学は進歩するのだということが実感されます。

もう一つ、世界の様々な国から来た研究者・臨床家がそれぞれの発表をした後に、グループディスカッションを行う小さいセッションも興味深いものでした。

日本では「新型出生前検査」と呼ばれているNIPTと、私たちが日常行なっている妊娠初期のコンバインド検査(超音波検査+血清マーカー検査)、そして確定的検査としての絨毛検査・羊水検査について、その検査結果の解釈が困難であったケースや、予想外の結果が判明したケースなどといった難しい問題に対処するために、どのように検査を組み合わせて正しい答に結びつけるか、検査を進めていき解釈を行う上でどのような注意が必要かという議論が目の前で行われます。その前提として、国は違っても同じ検査が行われていて、検査技術が進歩するとともに新たに出現する問題点について、同じ土俵の上で議論できるという事実があります。この種の検査の導入、進められ方という点において、ここ20年特殊な道を歩んで来て、今も特異な状況の只中にいる日本の研究者・臨床家はどうあがいてもこの議論に加わることができません。活発な議論に刺激を受けると同時に、寂しい気分になりました。

国際学会に参加すると、日本はやはり極東の辺境にある国なのだということが実感されます。それでいて、メインフロアの機器展示ブースでは、日本企業が何社も並んでいるのが実に不思議な印象で、学問を生業とするものがもっと活躍できるような環境づくりと教育を考えないといけないと感じました。

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学会が行われているAustria Center Vienna