FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

なぜ日本のマスコミは無痛分娩に対して、否定的な報道が多いのか?→ 正しい情報を得よう。

先日、当院を受診された方が、「無痛分娩を希望しているのだが、事故報道などを見て家族が反対している。」とおっしゃっていました。

どうも無痛分娩に関してマスコミ報道を見ていると、悪いイメージばかり強調されているようなきらいがあって、なかなか正確な情報が伝わっていないように感じます。

そもそもフランスでは8割以上、アメリカでは6割強の妊婦さんたちが無痛分娩で出産されているぐらい普及しているこの医療行為が、なぜ日本ではこれほどネガティブに取り上げられることが多いのでしょうか。

日本というのは不思議な国で、いろいろな面で世界標準を拒絶するようなところがあります。最近の話題では子宮頸がん予防につながるHPVワクチンの接種勧奨の問題や、飲食店における受動喫煙対策の問題などが、そういうトピックだと考えていますし、以前から私たちが問題視しているNIPTの取り扱いももちろんそうなのですが、無痛分娩も同様のものですね。日本における無痛分娩の普及率は1割に満たないという現状があります。

そこでこのブログでもこのテーマについて取り上げて、よい情報提供をと考えていたところ、自分で執筆しなくてもちゃんと良い情報提供がなされていることがわかりました。こういう情報を推薦すれば良いと考えましたので、それらを紹介します。

 まずはこの記事です。

www.buzzfeed.com

上記記事の中に、「医学的に正しい情報を得ることが安心につながります。

という書き出しとともに、日本産科麻酔科学会のホームページ内の無痛分娩Q&A」というページが紹介されていますので、ここにもリンク貼っておきます。

www.jsoap.comただ、難しい点は、無痛分娩の実施体制やその方法など、医療機関による違いが大きく、技術面でも安全性の面でも、まだまだ均一感が少ないという現状があることでしょう。日本産科麻酔学会や日本産科婦人科学会を中心によく議論して、良い体制づくりが進んで行くと良いのですが、、、

できることなら規制ばかりを考えずに、普及を第一に考えて進めて欲しいと思っています。普及していく中できちんとした体制でないところが淘汰されていくことが自然だと思うからです。

ある物事(例えば専門的知識や技術に関連すること)について、それが厳重に管理して慎重に進めることの方が大事なことなのか、まずは普及させることを第一に考えるべきことなのかについて、どちらを重視すべきかの判断が、あまり的確でないことがこの国では多いように感じます。もう少し、個々人の判断力に委ねるとことがあっても良いのではないかと感じることも多いです(ただしその分、個々人は判断力を磨く必要があり、自己判断に基づいて決定したことについて責任を持つ意識も養成しないといけないとは思いますが)。