FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

胎児ドックを行う施設が増えているようですが、、

最近、「胎児ドック」を行う施設が増加傾向にあるようです。

ちなみに「胎児ドック」でググると、以前にはあまり聞いたこともなかったクリニックが出てきたり、昔からある産婦人科だけどここの先生、胎児超音波検査を専門にしてるひとだったっけ?という施設も胎児ドックを売りにしていたり、ちょっと乱立状態になりつつあるのでは?と感じます。

産婦人科の開業医として、何を売りにするかということを考えたときに、最近のニーズから一つの看板になり得るものとして、ホームページに載せたりしている施設が増えてきているのだろうなと思います。

こうなってくると、果たしてこの「胎児ドック」と言われているもの、どのぐらい信頼のおけるものなのか、判断が難しくなってきているのではないでしょうか。

この問題点、このブログでも以前に指摘しています。

胎児ドックについて2(2016年7月31日) - FMC東京 院長室

超音波診断装置は、日本中どこの産婦人科にもあります。そして、誰でも妊婦さんのお腹にエコーゼリーを塗って探触子をあてれば、子宮内の胎児の画像を表示することが可能です。胎児を画面に表示するだけなら、非常に簡便な装置です。医者や技師なら誰でも使えます。でも診断技術というのはそういうものではありません。知識と経験がモノを言います。常に新しい情報を仕入れること、日常的に技術を磨くこと、そして多くの症例を経験することが、診断率の向上に寄与するのです。でも、「胎児ドック」をやっているというお医者さんの誰がそういう努力をして経験を積んでいる人で、誰がそうでないのかはわかりません。私も、誰がどのような診断技術を有していて、どのくらいの経験を積んでおられるのか、把握できるわけではありませんので、どの施設なら信頼できてどの施設は今ひとつなのかなどといったことは言えません。ただ、専門施設としてやっている立場としてこれだけは言わせていただきたいと思うことは、一般的なことを手広くやっている開業の先生たちが、片手間に「胎児ドック」と言っているものと、私たちのやっていることを同等と思ってほしくはないということです。まとめサイトなどでも同列に並べないでほしい、このあたり、お医者さんでもわかっていない人がいっぱいいます。うちはこれを専門に勝負しています、他院とは一段レベルが違うという矜持を持ってやっています。

ちなみに、以前から言っていることですが、当院では、「胎児ドック」という言葉は使用していません。

そもそも、出生前/胎児診断について議論する学会や知識を得る機会としての講習会の場で姿を見かけたこともないような人たちに高いレベルの診療が可能なのか、重大な問題を見落とすことはないのか。やっていて怖くないのかと思います。私は、精密に検査すると言っている手前、もし何か見落としがあったらどうしよう、生まれてきてから思ってもみない問題が見つかったらどうしようと、いつも気が気ではありません。もちろん画像診断には限界がありますし、常に100%にするのは無理だということをわかっていただいた上で検査を行っているつもりではあるものの、やはり立場上、100%を目指すべきだと思っているし、ほかの医者なら見つけられたものを私のクリニックで見落としたなどということがあったら、大問題です。実際に、超音波では診断しきれなかったことが生まれてから新たにわかったというケースは、少ないながら存在します。しかしおかげさまで、今のところ重大な見落としという種類のものではありません。

もちろん、ほとんどの妊娠・出産はなんの問題もなく経過しますし、多くの赤ちゃんは問題なく生まれてきますので、ある程度きちんと観察できれば多くは問題がない赤ちゃんです。しかし、そういう気持ちでいると、思わぬところで重大なケース、それも発見の難しいケースに遭遇することがあります。そしてそういったケースの発見からその後の対応に至るまで、やはり知識と経験がモノを言います。そういう経験をしたことがあまりないお医者さんに、対応が可能でしょうか。

決して、当院だけが特別だと言いたいわけではありません。私が把握していないだけで、私たちよりもレベルの高い検査を行って、適切な対応をしている施設もあるかもしれません。ここで言いたいことは、「胎児ドック」と一口に言っても同等ではないということと、私たちのやっている検査は「胎児ドック」ではありません、ということです。