あっという間に7月になっていました。毎日の仕事に追われつつ、現状をなんとかできないものかと考え続けていますが、突破口が見えてきません。
NIPTの新指針が6月22日の日産婦理事会において議決され、臨時総会で報告されてから、2週間が経とうとしています。
7月3日付で日産婦のホームページにこの件に関する新理事長の所感が掲載されました。
www.jsog.or.jp私は、そもそも日産婦が実施施設を拡大することについては、むしろ賛成の立場でした。その上で、私たちのような専門施設がつまはじきにされてしまうことに強い危機感を感じ、質問状を送りました。(回答はありません)
現状をなんとか改善しようとした姿勢はよく理解しているつもりです。妊婦と向き合っていない人たちが具体的提案もなくただただ反対意見を述べて問題をそのままにしている姿勢や、年長者ばかりがしたり顔で意見していることに対して新理事長が感じておられる懸念には共感します。また、延々と議論ばかりを続けているわけにはいかないという切迫感も共有していますので、今回の流れは本当に残念に思います。前理事長はじめ理事会メンバーがもう少し丁寧に物事を進めてくれたら、と思うと、残念でなりません。
ここに添付されている『アンケート結果報告書』は、これまでにあまり表に出ていなかった妊娠世代の声が反映されているようであるところについては一定の評価はできるものの、回答数も少なく、また質問も恣意的であり選択肢が適切か否かの疑問もあるなど、いろいろと問題はあると思います。これについては、いずれ論じたいと思います。
さて、少し戻って、今回の新指針の議決と厚労省の検討会が立ち上がる件についての報道が、全国紙・地方誌などでなされたという情報をいただきました。以下のようなものです。
熊本日日 2019/6/25 09:19
新出生前診断 倫理面含め国民的議論を
信濃毎日 2019/6/25
新出生前診断 立ち止まり幅広い議論を
産経 2019/6/25 05:00
【主張】出生前診断 命の選別に広範な議論を
京都新聞 2019/6/27 13:00
社説:新出生前診断 社会全体で議論深めよ
で、まあ一応ひと通り目を通してみたのですが、どれもこれも言ってることは同じですね。一つ一つ細かく検証してツッコミを入れたいところなのですが、これもまた時間のあるときにすることにして、本日はざっくりまとめて意見します。
まあ、おしなべて出生前検査の拡大に懸念を表明しているわけです。検査の実施に反対する立場の方の意見と同じく以下のような考えに基づいています。
・胎児の染色体異常が見つかった結果、ほとんどの妊婦が中絶を選択する現状がある。これが広がることは命の尊厳を損なうことにつながる。
・検査の広がりは妊婦の不安を煽り、安易な中絶につながりかねない。また、検査が一般化すると、妊婦は検査を受けるように重圧を受けるし、異常のある子を産み育てることに対して批判的な風潮や自己責任論が広がる懸念がある。
・結果的に、多様な人が生きる社会の否定につながりかねない。
なぜ、検査の実施によって起こりうるネガティブな結末ばかり強調して、検査そのものを悪者にしようとするのでしょうか。
このような意見は聞こえが良いから言いやすいのでしょうか。
このようなネガティブな面が想像されるなら、そういう状況に陥らないようにする工夫や改善策を考えようとは思わないのでしょうか。どうすればそのような状況にならないようにしていけるのかを検討しないで、単に検査の実施・広がりが良くないことだから規制しろという考え方で良いのでしょうか。
検査そのものに大きな問題があるのなら、そういう方針にも同意できますが、この検査のメリットはすごく大きくて、妊婦さんたちにとっては現在の混乱状況を解決してくれる大きな選択肢のはずなのに、そういう見方をしてもらえないのは何故なんでしょうか?
そして、これらの意見に共通するものとして、その根底に、中絶=命を絶つ行為=悪いこと、という考えが浸透しているように感じるのです。それならば、NIPTの実施に関してのみ議論しても仕方がないし、むしろより混乱する結果に繋がりかねないということはあまりわかってもらえていないようです。
この問題については、少し続けて論じていきたいと思います。