2つめは、4月9日にオンライン上で読むことが可能になった、AJOG MFM(米国産科婦人科学会誌・母体胎児医療)にアクセプトされた論文(速報)です。
コロンビア大学医療センター・ニューヨークプレスビテリアン病院の医師からの報告です。ニューヨーク市の系列2病院における3月13日〜27日のケースをまとめました。
鼻咽頭から採取した検体を用いて新型コロナウイルス感染が確定した妊婦43例の経過を追ったものです。
14例は入院時無症状で、入院中になんらかの症状があらわれたか、もしくは、3月22日以降産科入院の全てのケースに検査を施行したことから見つかったもので、そのうち10例(71.4%)は、分娩のための入院後かあるいは産後早期の段階で、感染による症状が明瞭になっていました。
29例は、もともと明らかな症状を示していたケースで、そのうち3例はその症状のためにお産の前からの入院が必要になり、もう1例は酸素供給が必要となるほど呼吸状態が悪化したために陣痛誘発による出産となったのちの産後6日後に診断に至りました。しかし、残りの25例の症状は軽く、分娩前後にも特に酸素吸入を必要とする状況には至らず、産後も通常通りに退院しました。
これらのケースから生まれた新生児のうち、生後1日目におこなった最初の検査で新型コロナ感染が確認された例は一例もありませんでした。
Wuらが示した新型コロナウイルス感染症の重症度分類に当てはめると、37例(86%)は軽症、4例(9.3%)が重症で、2例(4.7%)が重篤な状態に陥りました。これらの割合は、過去に妊娠していない患者で確認されている頻度(それぞれ、約80%、15%、5%)と同等でした。
ということで、妊婦がこのウイルスに感染した場合に、妊娠していない人と比べて重症化しやすいのか否かという点については、同等であるという結論に至っているようで、これは、以前に以下の記事で取り上げた中国からの報告と同じ結果と言えるでしょう。
drsushi.hatenablog.com ただ、この論文が結論として示しているもう一つのポイントとして、何の症状もなかった妊婦からもコロナウイルス感染が発見されていることから、お産で入院してきたときに全ての妊婦を対象に、感染を確認する検査を行うべきであると述べている点は、議論の対象となるでしょう。果たしてわが国でこれが可能なのか、そして本当に皆そうすべきなのか。わが国の現状からみて、あまり現実的ではないように感じますが、もし仮に東京がニューヨーク並みの状況になるようなら、確実に必要性が高いということになるでしょう。