FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む

2月18日に出された、『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』について、内容を検証していきたいと思います。

 

 まず全体を通して、指針に記載されている内容の基本は、過去の指針を踏襲している部分が多々あると感じられます。これまでの指針をベースに、現状に合わせて、あるいは各界からの意見をまとめて、改訂していくような形で作成されている印象です。

 これはつまり、これまでの日本医学会内の委員会を中心とした指針の策定・施設の認定・臨床研究という形式を含めた制度の運用の仕組みについて肯定的に捉え、現在の混乱の元凶は認定外の施設の暴挙に他ならないという考え方に起因していると感じました。

 私は以前から、今回の混乱については、元々の委員会のやり方に問題があり、またその根本原因は政府が国としての方針を示さず学会に丸投げしてきたことであると考えてきました。新たな制度を作るにあたっては、悪者を糾弾するという姿勢ではなく、自らの失策について向き合い、反省することが必要と指摘してきました。したがって、今回の新指針は、本来であれば全く一から作り直すべきであったと思います。以下の図に示しただけの時間をかけてきたにもかかわらず、本当の意味での根本的な見直しがされていないように感じます。

 

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 それだけ空白期間が長かったのだと思います。出生前検査の情報については妊婦に積極的に知らしめる必要はないという、ただただ抑制的な方針を維持し過ぎてきたのだと思います。今回かけた時間では、何かおかしな方向にずれていってしまっている現状を修正するくらいしかできなかった、というのが正直なところでしょう。

 

 私たちの国の出生前検査・診断の基本的な考え方が、果たして今まとまっているのか。これまでの歴史や、世界の状況、これからのこの国の社会のあり方など、変わらなければならないことは数多くあります。将来この国を支える新しい生命の誕生に向けて、どのような社会のあり方で臨むのか。この国の未来の根幹に関わる非常に重要な問題であるという認識とビジョンを持って、設計していかなければならない課題だと感じます。

 

 次エントリーからは、内容を一つ一つチェックしていきたいと思います。