満を持してというのか、遅きに失してというべきか、いや遅すぎたとは思いたくないまだまだこれからの話とは考えているわけですが、当院でもついに、というかやっとというか、NIPTを開始することになりました。
2022年9月12日に、日本医学会の出生前検査認証制度等運営委員会が、NIPTを実施する医療機関(連携施設)を認証し、同26日より認証という形になりました。この中に当院も含まれています。
運営委員会からは、以下の内容のメールが届きました。
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医療法人社団メタセコイア FMC東京クリニック
実施責任者 中村 靖殿
貴施設は、令和4年9月12日に開催された第4回出生前検査認証制度等運営委員会において、NIPTを実施する連携施設として認証されました。
なお、認証登録開始日は、令和4年9月26日(月)となります。
添付にて「NIPTの実施について(周知)」をお送りいたしますので、ご確認ください。
認証証は今後順次郵送いたします。
なお、本メールに「日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会」のバナーデータを添付いたします。貴施設ウェブサイトに、本バナーをご掲載のうえ運営委員会ウェブサイトにリンクを張っていただくことも可能です。(https://jams-prenatal.jp/)
出生前検査認証制度等運営委員会
委員長 岡 明
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いやあ、正直感慨深いです。
思えば長い年月でした。
当院の前身となる「胎児クリニック東京」を神田淡路町に開設したのが2013年。ちょうどNIPTの臨床研究が開始された年でした。これに先立つ2012年8月、読売新聞1面に「妊婦血液でダウン症診断」の文字が踊り、このときに予定されていた臨床研究の開始が8ヶ月後にずれ込んだのでした。分娩を扱わず小児科医もいない私たちのクリニックは、この臨床研究に参加する資格はありませんでしたが、私はこの新聞記事が出る直前に行われていた、この臨床研究を行う中心的存在であった「NIPTコンソーシアム」の会議には参加していました。この頃、臨床研究が順調に進んで結果が出たら、NIPTは一般臨床として行われるようになり、そうすれば私たちも実施しようと考えていました。何しろ私たちは、出生前検査を専門に行う施設であり、NIPT以外の全てを日常的に扱っていたのですから。
それがなぜかいつまで経っても、関係各学会の思惑や対立などの末、厚生労働省案件になるなどして実施できる目処が立たず、そうこうする中で認定外のクリニックが乱立するようなとんでもない状況になり、元はと言えば日本の出生前検査の健全な発展のために考えられたはずの臨床研究からのスタートが、結果的にはよりひどい広がり方になってしまうのを外側から見ていなければならない日々は、本当に辛いものでした。
そもそもなんでこんな苦労しなければならなかったのか、という忸怩たる思いはあります。
このあたりの顛末は、このブログでも何度も取り上げてきましたから、ぜひ過去記事を見てただきたいと思います。
何はともあれ、ようやく、NIPTを開始することができるようになりました。
私たちこそが、この検査を正当に扱うことのできる施設であるという気持ちを胸に、生まれる前の胎児の状態について、他にはないレベルの知識と技術を駆使して、総合的な判断を行う仕事に邁進していきたいと思います。
実際には、この認証制度のあり方など、まだまだいろいろな問題点は残されています。上に示した認証制度等運営委員会からのメール内に記載してある、「NIPTの実施について(周知)」の内容に関しても、問題提起が必要な部分が多々あるのが現状です。
正直言いまして、お上によって認証していただきありがとうございますというような卑屈な気持ちは微塵もありません。認証されてほっとしたのも束の間、むしろ今回届いた文書を読んで、あるいは作成された資料を見て、「いったいなんでこうなるんだ。」と思うようなことの方が多いのです。これは今後も戦いは続くのかなと思わざるを得ません。
この国の出生前検査、そして胎児診断・胎児治療へと続くこの分野の健全な発展のため、まだまだ頑張っていきたいと決意を新たにしています。