あけましておめでとうございます。
昨年のクリスマスイブに届いた文書(以下の記事参照)に対し、返答および疑問点を記した文書を、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会 部会長 久具宏司様宛に送付しました。ここに内容の全文を掲載します。
まずは、届いた文書についての過去記事を参照してください。
以下が、送付した文書の内容です。
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令和2年1月6日
日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会
「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会
部会長 久具宏司 殿
医療法人社団メタセコイア FMC東京クリニック
理事長・院長 中村 靖
拝復
新春の候、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、先般当方より提出いたしました、「母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する登録申請」に関して貴殿よりいただきました照会につきまして、当方より回答いたしますとともに、疑問点についてお答えをいただきたく、質問も添えてお送りいたします。ご回答いただけますとありがたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、先日届きました文書には、「母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する臨床研究施設」の申請との記載がございましたが、当方は臨床研究施設としての申請は行なっておりません。これは、当院からの申請の時点ですでに臨床研究は終了したと認識していたためで、当方といたしましては、あくまでも一般臨床として実施する目的で申請したものであることを申し添えさせていただきます。
敬具
【御照会への回答】
- 2018年1年間に当院で取り扱った分娩数(妊娠22週以降):0件
常勤の母体保護法指定医の元での人工妊娠中絶を行うことの可否:否
- NIPTの依頼先の検査施行会社との間に取り交わされた契約
現時点で、NIPTを依頼することの可能な検査会社との契約は存在していますが、この契約にNIPTは含まれておりません。
【上記照会に関する質問事項】
- 分娩および人工妊娠中絶に関しまして
今回の登録申請は、平成25年3月9日に日本産科婦人科学会より公表された「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」(以下、「指針」と表記します)に基づいて、施設認定・登録部会での審査を経て認定されるものと認識しております。この「指針」におきましては、V-1 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査を行う施設が備えるべき要件として、複数の要件の記載がありますが、当院は、この要件をすべて満たしている前提で申請しております。この要件の中には、『4. 検査施行後の妊娠経過の観察を自施設において続けることが可能であること。』との記載がありますが、この点につきましても、当院の体制および関連医療機関との連携体制につき、説明を加えて記載してあります。
一方で、先日届きました文書には、<照会事項>として『検査施行後、妊娠終了までの妊娠経過を自施設において観察することができる体制であることが要件です。』との記載に引き続いて、『つきましては、2018年1年間の貴院において取り扱った分娩(22週以降の物)の総数、および常勤の母体保護法指定医の下で人工妊娠中絶術を行うことが可能であるか否かについて、ご回答願います。』と記載されています。しかしながら、「指針」内の要件としての記載には、分娩や人工妊娠中絶を自施設で行なっていることについての言及はなく、求められているものは、自施設における『検査施行後の妊娠経過の観察』ですので、この照会事項が、何を意図してのものであり、これへの回答がどのように施設認定に反映されるのかについて、疑問に思う次第であります。
本「指針」につきましては、令和元年6月22日の日本産科婦人科学会臨時総会において承認された新しい指針(以下、「新指針」と表記します)があり、その中の〔5〕-2 NIPTを行う施設が備えるべき要件として、(1)基幹施設が備えるべき要件の4. および、(2)連携施設が備えるべき要件の3. として、『検査施行後の分娩まで含めた妊娠経過の観察、および母体保護法に基づく妊娠中断の可否の判断および処置を自施設において行うことが可能であり、現に行っていること。』との文言が存在しますので、日本産科婦人科学会としては、この「新指針」が念頭にあることとは存じます。この度の<照会事項>も、この「新指針」の内容が反映されたもののように感じます。しかしながら、日本産科婦人科学会ホームページ内、「会員の皆様へお知らせ」2019年6月22日づけ更新の、『新しい「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」に関するお知らせとお願い』を見ますと、『一方、新指針案に関しては、令和元年6月21日付けで、本会理事長宛てに厚生労働省母子保健課から要望書がありました。その内容は「国においてもNIPTに関する審議会を設置し必要な議論を行うので、実施についてはその議論を踏まえて対応されたい」とのご要望でした。そこで、理事会および総会では、その意を汲み、ひとまず指針の運用開始を保留とし、厚生労働省での議論の進み方を注視しながら、運用の詳細や開始時期について今後、判断することが了承されました。従いまして、この新指針が実際に運用開始されるまでの間は、従来のNIPT指針に従ってNIPT検査を行うこととなります。』との記載があり、今回の「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会における審査は、従来の「指針」に基づいて行われるものと理解しております。
以上より、「新指針」では言及されている『分娩まで含めた妊娠経過の観察』や『母体保護法に基づく妊娠中断の可否の判断および処置』が明記されていない従来の「指針」のもとにおいてこの度の施設認定・登録部会での審査を行う上で、なぜ2018年1年間の当院において取り扱った分娩(22週以降のもの)の総数、および常勤の母体保護法指定医の下で人工妊娠中絶術を行うことが可能であるか否かの情報を必要とするのか、またその情報がどのように審査に反映されるのかについて、私どもが納得できるようなご説明をいただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
- NIPT依頼に関する契約につきまして
NIPTは現在、日本医学会「遺伝子・健康・社会」検討委員会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会の管理下にあり、認定・登録を経た上ではじめて実施できる検査であると認識しております。医療機関といたしましては、実施できるか否かについて決定していない検査に関して、検査会社と契約を結ぶことは現実的ではありません。このような契約は、検査を実施することが決定した上で締結するのが通常の手順ではないかと考えますが、いかがでしょうか。現在、NIPTを扱う検査会社は複数存在し、当方といたしましたは、これら複数より最も信頼性が高く、かつ費用対効果が良い会社を厳選の上、契約を締結したいと考えております。しかしながら、このような複数の会社との契約交渉は、実施できるか否かが決定していない時点で始めるべきものではないと考えております。また、検査会社の側でも、実施するか否かが決定していない施設と契約交渉を行うことは、あまり現実的な話ではないのではないでしょうか。
検査実施施設としての登録申請を行おうとする施設が、この検査を行うにあたって要件を備えているか否かを審査する上で、なぜあらかじめ検査会社との契約を行う必要があるのか、ご説明をお願いしたく存じます。この契約を行う必要性について、納得のいくご回答が得られない段階で、特定の検査会社との契約を締結することは、控えさせていただきたいと考えております。
以上