FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

新型コロナ

妊婦さんの新型コロナワクチン接種 - 日本でもアメリカでも、専門家は強く推奨しています。

本来の私の専門である出生前診断に関して、記事にしたいことはいくつかあるのですが、新型コロナウイルスの流行状況と医療の現状が、たいへんなことになってきました。ワクチン接種が多くの医療関係者や行政機関の努力によって進んでいるのですが、最近、接…

妊娠と新型コロナワクチン:妊婦さんへの接種が推奨されるようになりました。

いろいろとやらねばならないことを抱えていて、しばらくブログの更新が滞っていましたので、久しぶりの記事です。テーマも久しぶりの新型コロナ関連です。 世界からかなり遅れをとってしまいましたが、ようやく日本でもワクチン接種が進みつつある状況になっ…

今年一年を振り返って(後半) 二人の恩師の話

振り返ってみると今年前半は、何か活路を見出せないかという気持ちがそれでも強かったように思います。しかし、後半はもう本当に日々をこなすだけだったような感じがします。やはりコロナ感染の影響が大きかったですね。 リモートになった学会 例年なら秋に…

今年一年を振り返って(前半)

今年の当院の診療は本日が最終日です。 私はわりといつも淡々と日々を送っていて、節目節目に何か総括するとか、将来計画を立てるとかといった作業がどちらかと言えば苦手な方なのですが、今年はさすがに特別な年だったように思うので、来年に向けてここで振…

不確かな情報に踊らされてはいけない。それを拡散するのはもっと良くない。-大阪府知事の会見の問題点。妊婦さんは気をつけて

驚きのニュースが入ってきました。なんと、吉村大阪府知事と松井大阪市長が府庁で記者会見を開き、ポビドンヨードを含むうがい薬が、新型コロナウイルスの減少に効果が期待できると発表したそうです。 「うがい薬で唾液中のコロナウイルス減少」吉村知事会見…

新型コロナウイルス感染 海外からの報告11: 妊婦では重症化しやすい

新型コロナウイルス感染、第2波が到来したのではないかという見解も出る状況になってきているようで、まだまだ安心して暮らせる日々にならない中、妊婦さんに関する情報も更新されてきました。 4月の時点では、妊娠は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の…

新型コロナウイルス感染 海外からの報告10: 授乳での感染はほぼない

周産期における母児感染に関する観察コホート研究の報告です。 権威ある医学誌として知名度の高い、The Lancet Child & Adolescent Health に掲載されました。現時点で速報としてオンライン公開されています。 Neonatal managemnet and outcomes during the …

新型コロナウイルス感染 海外からの報告9: 新たな子宮内感染の報告

昨日、子宮内感染についてのニュースを取り上げたばかりでしたが、7月14日付でNature communicationsという権威ある専門誌に、新たなケースが報告されていたことがわかりました。オープンアクセスで、誰でも読むことができます。 Transplacental transmissio…

新型コロナウイルス感染 海外からの報告8: 子宮内感染と思われるケースについて

久しぶりの新型コロナウイルス関連の話題です。 First documented case of baby infected with COVID-19 in womb reported in Texas Study Findsというアメリカのニュースサイトの記事ですが、テキサス州で子宮内の胎児に新型コロナウイルスが感染したケース…

検査は『安心』につながるのか

先日来、新型コロナウイルス感染を調べる目的でのPCR検査の行われている件数や体制のあり方など、マスコミで話題になることが多く、検査の拡充を求める声が上がっていたようですが、医療関係者の側では慎重論も多く、TVなどでの情報拡散に対しては問題の本質…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 7: 英国から。妊娠末期のソーシャルディスタンシングが有用

久しぶりの海外からの報告です。 BMJ(British Medical Journal: 英国医学雑誌)に掲載予定の速報(プレプリント)です。 www.medrxiv.org The UK Obstetric Surveillance System SARS-CoV-2 Infection in Pregnancy Collaborative Group(英国産科サーベイ…

雑感:規範意識と同調圧力

このブログは、テーマが絞られているため、読者層もごく限定されていて、いつも興味を持ってフォローしていただいている方々には感謝しかないのですが、できればこれまであまりこの分野の話題に興味を持っていなかった人にも、気づく/考えるきっかけになっ…

新型コロナで勉強の仕方が変わる? 医療の世界でも情報収集能力の差が、格差を生むだろう。

新型コロナウイルスの世界規模でのアウトブレイクは、医療従事者にも大きなインパクトを与えています。最前線で奮闘している人たちは、これぞ医療従事者のやるべき仕事だという使命感、気概のようなものを糧に踏ん張っておられるわけで、尊敬の念しかありま…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 6: 自然流産・自然早産とは関連しない

中国における116例の新型コロナウイルス感染妊婦についてまとめた論文が、AJOG (American Journal of Obstetrics and Gynecology: 米国産科婦人科学会誌)に4月17日付で受理され、速報の形で出ていました。実際に冊子に載るときには少し修正される可能性があ…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 5: 妊娠初期感染妊婦2例において、羊水からは検出されず

日本でも、新型コロナウイルス感染妊婦の出産が北里大学病院であったようです。無事出産され、母児共に健康に退院されたとのことで、喜ばしい限りです。 このほかにも、感染した妊婦さんの情報が時々舞い込んできています。現在妊娠中の方にとっても、自分も…

NIPTのオプションが増えることは、安心が増えることとは必ずしも一致しないかもしれない(その1)

以前にも取り上げた問題なのですが、出生前検査の専門施設として、日夜さまざまなケースと向き合っていると、現在、本来は出生前の胎児や先天性の疾患についてのいろいろなこと、染色体や遺伝の問題などについて、ほとんど扱ったこともないような専門外の医…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 4: 胎児の医療はどう扱う?

国内でも感染者数の増え続けている新型コロナウイルス。最近の報告では、このウイルスの感染力は、発症前後の時期に強いということがわかったきたようで、つまり症状が明らかになる少し前から人に感染させる可能性がかなりあるということになります。つまり…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 3: 胎児への垂直感染はあるのか

3つめは、垂直感染(子宮内での、母体から胎児への感染)に関する論文です。 国際産科婦人科超音波学会(ISUOG)の機関誌Ultrasound in Obstetrics and Gynecologyにアクセプトされ、4月7日に発表された中国からの速報です。 著者は北京大学第一病院のWangら…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 2: NYの43例・妊婦も重症化する率は同じ

2つめは、4月9日にオンライン上で読むことが可能になった、AJOG MFM(米国産科婦人科学会誌・母体胎児医療)にアクセプトされた論文(速報)です。 COVID-19 infection among asymptomatic and symptomatic pregnant women: Two weeks of confirmed presenta…

妊娠と新型コロナウイルス感染 海外からの報告 1: 108例のまとめ

妊娠と新型コロナウイルス感染との関連について、複数の論文が発表されてきました。 まだ速報段階のものが多いですが、紹介していきたいと思います。 この記事から3編連続でお伝えします。 スウェーデンはLund大学、Skåne大学病院の産婦人科医と新生児科医が…

妊婦さん対象 新型コロナウイルス感染症アンケート

コロナ禍の状況下で、妊婦さんたちはいったい何に困っておられるのか? もっとも問題になっていることは実際何なのか? 当事者の声を聞いて、支援に役立てようという目的で、ニンプスラボと河合蘭さんが共同でアンケート調査への協力を要請されています。 こ…

緊急事態宣言発令 私たちはどう対応すべきなのだろうか

昨日(2020年4月7日)、安倍総理大臣が東京都を含む7都道府県を対象に、『緊急事態宣言』を発令しました。これに伴い、東京都では、緊急事態措置を実施します。 私たち医療機関は、ライフラインに関わる業務なので、基本的には業務をストップすることなく続…

もし妊婦さんが新型コロナウイルスに感染したら、産科クリニックはどう対応する?

前記事の最後の部分で、新型コロナウイルスに感染した妊婦さんが出たら、どの医療機関でどう扱うのか、具体的な対処方針がわからないとい書きましたが、本日付で、日本産婦人科医会より会員に向けて、対応方法を知らせる文書が発出されました。 これによると…

0歳児の新型コロナウイルス感染の報告。どこから感染したのか?

書きかけの項目がいくつか残っているのですが、どうもそれどころではなくなってきて、新型コロナ関連の情報収拾で頭がいっぱいになってきつつあります。最前線で対応しておられる医療従事者の方々には、頭が下がる思いです。 私は、災害医療や感染症の専門家…

新型コロナウイルスと妊娠に関する情報

前エントリーの続きは現在執筆中ですが、その前によりタイムリーな情報を。 ISUOG (International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology: 国際産科婦人科超音波学会)が、妊娠中の方向けに新型コロナウイルスと妊娠に関する情報をまとめたリ…

ネット記事は、何を目的としているのか。ただセンセーショナルに煽るのでは、人を不安に陥れるだけで、害でしかない。 - 時事メディカルの記事『中国で重症妊婦が死産』の問題点

新型コロナウイルス関連で、いろいろな情報が飛び交い、すべての国民が不安な日々を過ごしていることと思います。しかし、その不安の多くの部分が、不正確な情報の拡散に起因しているように思われてなりません。先日も、JBpressというメディアが、とんでもな…