FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

出生前検査・診断

「どんな子でもきちんと産んで育てたい。」と考えている人にとって、「出生前検査は受けない。」という方針は、はたして正しい選択なのだろうか。

当院での超音波検査の質と、カウンセリング体制、医療連携への取り組みをご評価いただいて、いろいろな医療機関から診療依頼がくることは、たいへん嬉しいことです。地道に続けてきたことが、大学病院を含む多くの施設のお医者さん達から、高くご評価いただ…

「出生前検査に対する見解・支援体制について」課長通知が各自治体宛に発出されました。

6月9日付で、厚生労働省子ども家庭局母子保健課長および社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長名で、各自治体(都道府県、市町村、特別区)母子保健主管部(局)長および障害保健福祉主管部(局)長宛に、「出生前検査に対する見解・支援体制について」(…

『妊婦の不安や悩みに寄り添う適切な遺伝カウンセリング』への違和感

前記事で、遺伝カウンセリングの捉えられ方に関連して、次回記事にすると予告していました。最近、気になった受診者さんの発言もあり、少し整理してみたいと思います。 前記事では、厚労省の専門委員会でまとめられた文書に、「日本産科婦人科学会の指針に定…

『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書』を読んで ー その1

2021年5月19日、第121回厚生科学審議会科学技術部会が開催されました。審議事項の議題3として、「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」の報告書について議論されました。 この会議の資料として、議題3については、以下の二つの資料が提出されています。 …

NIPT実施施設の認定基準は再考が必要:認定施設と認定外の施設との違いは、遺伝カウンセリング体制にあるという自己満足はやめるべき

GWは、新型コロナウイルス蔓延の件で頭がいっぱいで、本業への集中力さえ削がれかねない心理的状態です。そんな中でも、妊娠・出産に臨む人は確実に存在するし、なんとかこの事態を乗り越えて、元気な赤ちゃんを産んでほしいと心より願っています。 ただでさ…

日本の妊婦さんにもっと知ってほしい事実1:妊娠初期の胎児超音波検査について

GW真っ只中、2年連続でステイホームの毎日です。 仕事がらみでやらねばならないことはいっぱいあるのですが、連休まで仕事がらみのことはあまりやる気が起こらない。でもせっかくステイホームなんだから、時間を有効に使いたい。。。。常に仕事のことが頭を…

妊婦への情報提供の問題 つづき

前記事からの続きです。 1. 情報を伝える側が伝えるべきと考えていることと、妊婦さんやその家族が知りたいこととの間にズレがあるのではないかという問題 2. 産科診療現場における対応の問題 について、考察していきます。 伝えるべき情報は何か NIPTの問題…

全ての妊婦に情報提供するという方針、誰が何をどう伝えるかが課題。

ずっと注目している厚労省の専門委員会の経過ですが、どうやら今月末を目処に何らかの方向性が示されるとの情報が入ってきています。この情報がいろいろな人たちにも伝わっているようで、マスコミ関係の取材依頼が複数届きました。それで少し考えたことを記…

出生前検査に係る検査実施体制の厚労省案。周産期医療機関がその担い手であるべきなのか?

以前から引っかかっていたことなのですが、出生前検査の担い手を考える場合に、何かというと一施設に多職種が揃っているというイメージで、周産期医療施設が適切という考えが出てきます。本当にそうなのでしょうか? 周産期センターのような総合的施設なら、…

いま一度再掲します。『NIPTのよりよいあり方に関する提言』

前記事で予告しましたが、厚生労働省の第5回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会で、いろいろな立場の委員の方々が資料を提出され発表される中、柘植あづみ委員のご発表がたいへん重要な内容であると感じられました。ここで示された提言は、以前にブログで…

出生前検査に関する専門委員会。国の方針は?

2021年3月17日、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の第5回が開催されました。 資料が公開されています。 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第5回)の資料について ZOOMで会議を視聴することができましたが、ここへきてようやくまとまりつつあるよ…

いよいよ国が動くことになった出生前検査

今週はじめに、ニュースが飛び込んできました。 ↑残念ながらリンクが切れてしまったようなので、画像だけ貼り付けました このニュース、それなりの反響があり、画期的な変化だという声が聞こえてきていたのですが、まあ確かに20年ぶり方針転換というとそれは…

『内なる優生思想』批判と、『中絶は罪』だと規定する思想

タイトルが違いますが、前記事の続きのようなものです。 前記事で次に書きますと予告した部分について、まずはちゃんと述べる必要がありますね。 内なる優生思想について ・NIPTが優生思想を助長するのではないかという危惧、障害者とともに生きる社会の実現…

理想を語る小児科医たちの危惧が、世間の妊娠年齢の人たちにどの程度伝わるだろうか。ー第12回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムに参加して

3月6日7日の土日に2つのイベントがありました。(私たちが行っている医師対象の勉強会「FMC川瀧塾」(日曜午前)も加えると3つのイベントになります) 土曜の午後は、第4回新生児生命倫理研究会、そして日曜の午後は、第12回日本小児科学会倫理委員会公開フ…

医師の中に遺伝学的検査の必要性の認識が甘い人や検査結果解釈能力の低い人がいる!?

染色体検査などの遺伝学的検査への消極的態度について考える記事を続けてきました。その裏にある心理や考えを探ってきたわけですが、それ以前に、どうもそういった検査の必要性の認識が甘い医師や、解釈のための知識レベル自体が低い医師がいるのではないか…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その3

検査を希望したら医師に叱責されたという事例に遭遇することが多々あります。実際の事例を参考にしつつ、考えていきたいと思います。 出生前検査・診断の現場では、障碍をもちつつ生活を続けている人々が差別を受けることなく生きられる社会にしなければなら…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その2

前記事では、産科・妊婦診療の現場における検査忌避の状況について書きましたが、今回は小児科の現場で経験される話に言及したいと思います。 次子再発の懸念にどう対応するか 当院に検査の相談で来院される方の中に、病気や障碍を持つお子さんを育てておら…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その1

出生前診断に関わっている中で、よくある相談として、かかりつけ医が検査に否定的という話があります。比較的多いのは、検査そのものの話すら拒否するような態度や、検査の相談をしたら諌められたというような話ですが、もっと具体的な、検査方法はそこにあ…

出生前検査 まずこの国の後進性をなんとかしないとダメ

2021年になって、新年早々にNIPT等の…専門委員会が開催されたこともあり、出生前検査関連の記事ばかりが連続しています(まあそもそもそれがこのブログのメインテーマではあるわけです)が、その流れで続けます。最近もこんなケースがあったというものを紹介…

専門委員会についての追記 事件は現場で起きているんだ

先々週の『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会』に関連して、資料をもとに論考を加えてきましたが、この時に公開されていた議論の内容について、少し補足することができましたので、ツッコミを入れていきたいと思います。 規制ありきで考えるべきではない…

遺伝カウンセリングという名の、お説教。

遺伝カウンセリングが重要というけれど、その『遺伝カウンセリング』と称されているもの自体の質は統一されているのでしょうか。学会認定施設ならどこでも、同じようにきちんとした遺伝カウンセリングを受けることができるのでしょうか。受診者さん達からい…

NIPTの『質』ってなに?それを担保するにはなにが必要と考えられているの?

先日行われた『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会』、これまで4回にわたって会議が開催されてきました。そんな中で、論点整理が進められ、これに基づいた一定の結論が、あと2回の会議ののちに出される予定と聞いています。しかし、この論点整理によって…

出生前検査に関する専門委員会は、どこに向かうのか。これを機に、何が変わるべきなのだろうか。

2021年1月15日金曜日に、厚生労働省のNIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第4回)が開かれました。例によって診療中でしたので、会議の全貌を把握する事は叶いませんでした(後日、動画が公開されることと思います)が、一部視聴できた部分に加えて資料…

専門的知識を必要とする検査を、専門家ではない医師が扱うべきではない。

現在議論になっている、NIPT(母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査)の扱い。常に話題の中心となっているのは、遺伝カウンセリング体制の充実の必要性であるように見受けられます。もちろんこれは大事なことなのですが、それ以前に、検査結果がどのよう…

この国では、出生前検査・診断の普及度は、まだまだ低いレベルにとどまっている - アンケート調査結果から考える

昨年10月にジャーナリストの河合蘭さんとベビカム株式会社が行った共同インターネット調査『出生前診断にニーズに関するアンケート』の結果が、昨年末にプレスリリースされました。 出生前診断について妊婦はどう考えている?調査で分かった、判定結果に対す…

2021年、年頭にあたって。 当院の強み・長所はなんだろう。 - 表に出ない仕事について

みなさま、新年あけましておめでとうございます。 昨年は、新型コロナウイルスに振り回された一年でしたが、今年はどうなるでしょうか。年頭にあたり、今年どういう姿勢でことにあたるべきか、考えてみたいと思います。例年ですと、それほど明確ではないにし…

今年一年を振り返って(前半)

今年の当院の診療は本日が最終日です。 私はわりといつも淡々と日々を送っていて、節目節目に何か総括するとか、将来計画を立てるとかといった作業がどちらかと言えば苦手な方なのですが、今年はさすがに特別な年だったように思うので、来年に向けてここで振…

NIPTに関する議論の場で、出生前検査の全体像や実情が見えているのだろうか。

12月16日水曜日に、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第3回)が開催されました。ZOOMによるライブ配信があったのですが、私自身は診療業務の合間に見る準備をしていたものの、実際に視聴することができたのは、会議最終盤のもうほとんど「これにて終了…

出生前診断をめぐる『ねじれ構造』 - 中絶と言いたくない産婦人科医と産婦人科医はすぐ中絶を勧めると思っている小児科医

日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が協力して認定制度を管理している『臨床遺伝専門医』の認定試験が行われています。今年は、ロールプレイ面接がZOOMを用いたweb開催となりました。今後は、現実の遺伝カウンセリングでもこの形が定着していくの…

検査を行わないという選択。患者の希望は、医師の説明に左右され過ぎていないだろうか。

前記事でとり上げた日本超音波医学会第93回学術集会。私自身も演題を2題発表しました。そのうち1題は、妊娠初期の胎児染色体異常スクリーニングに関するセッションでの「注目演題」、もう一題は、胎児の心臓の検査に関するものです。この学会はweb開催になっ…