FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』が公表されました。

2022年1月31日に、日本医学会第2回出生前検査認証制度等運営委員会が開催され、2月18日に、「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」が公表されました。

 早速この内容を確認しましたが、今回の指針でNIPTを行う医療機関の認証基準がかわり、私たちの施設も「連携施設」として認証される道が開けたように思います。当院の開院以来苦節6年半(前身の胎児クリニック東京時代を含めると8年半)にして、ようやく光が見えてきたといったところでしょうか。

 正直ここ数年はひたすら耐える日々でした。

 出生前検査・診断の専門施設として、しっかりと学び、実践を積んできたスタッフを擁し、数々の問題に真摯に向き合い、多くの専門家の方々から信頼を得て相談を受け、診療を続けてきたという自負があります。しかし、不当と思えるような制限のもとNIPTを行う施設としての認定を受けることができず、一方で学会の認定の仕組みを無視して商業主義に走る多くの専門外施設が増加の一途を辿る現状を憂いていました。クリニックは赤字でギリギリの状態に喘いでいます。しかし、どこにも頼れる場がなく困っている人たちを前に、倒れるわけにはいきませんでした。

 もう少しの辛抱です。やっと前が見えてきました。出生前の胎児から家族全体に至る問題について網羅的・総合的に対応できる施設として、やっと欠落が埋められます。

 

今回出された指針の方向性は本当に正しいのだろうか

 しかし、自分たちが検査を行う医療機関になることができる見通しが立ったというだけで、単純に喜んでいて良いというものでもなさそうです。今後のこの国における出生前検査の普及に関連して、さまざまな問題が存在することが見えてきているようです。

 私たち自身も、「認定していただいてありがとうございます。」と卑屈になるつもりはありません。ここまでの道のりの厳しさは忘れないし、問題が解決されたとは思えません。

 

指針をしっかり読み、考え続けます

 今回の指針の内容や今後の出生前検査の扱われ方についてなど、多くの方々がいろいろな指摘をしたり、意見開示をされることと思います。なんとなくこういう意見・指摘が出るだろうなというのも想像できます。

 しかし私たちは、これまでの取り組みの経験も踏まえて、おそらく多くの人たちとは違った視点からの問題提起をすることになると考えています。以前から私の言説をフォローしていただいている方にはわかると思いますが、私たちはいわゆる「無認可施設」の跋扈を問題視すると同時に、学会側の認定の仕組みやその根底にある考え方に対しても大いに疑問をもち、問題点を指摘してきました。

 今回公表された指針にも、一般に指摘されることになるであろうものとは別の視点からの多くの問題点を感じています。

 次の記事から順に取り上げていきたいと思います。しばらくはこの話題の記事を続けていくことになるでしょう。