FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

妊娠初期の超音波検査は、もうNTを測るだけの時代ではない。

私たちは、あまりにも日常的に妊娠初期の胎児検査を続けてきているので、自分たちが毎日見ていることはあたりまえのような感覚になりつつありますが、受診された方やそのご家族が、超音波画像を見ながら、「こんなに見えるんですね。」とおっしゃることがよ…

産婦人科の先生たち、予定日をちゃんと決めましょうよ。

お産の予定日はどうやって決まるのか、みなさんご存知でしょうか。 分娩予定日は受精日を妊娠2週0日として計算することになっています。つまり、いつ受精したのかが基準になるわけですね。生命の始まりは受精卵ができた瞬間からだからです。じゃあなぜここが…

妊娠初期の胎児超音波検査について、海外との開きを埋める努力が必要

新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの生活を大きく変えました。以前のように自由に人との交流ができない状況が続いています。コロナの流行前には、私たちの仕事上の発見や成果を学術集会で発表し、議論するということが当たり前でした。今はこれに…

HPVワクチン(子宮頸がん予防のワクチン)の積極的勧奨の再開は迅速に行うべき。もう待ったなしの状況です!

先日、歓迎すべきニュースと、これに関連して驚くべき情報とが、同時に話題になりました。 私は、産婦人科専門医ではありますが、自分の専門分野である胎児の診療に絞った診療を行うことを決めて以来、婦人科診療を行わなくなって既に10年以上の年月になりま…

プロの判断が、固定観念に縛られてはいけない。 - 染色体異常の“確定診断”とは何か

新型コロナウイルス感染者数の急激な増加による医療崩壊の真っ只中にあります。多くの妊婦さんが、不安を抱えつつ毎日を送っておられることと思います。先日、千葉県において、新型コロナに感染し自宅療養中だった妊婦さんが自宅で早産してしまい、生まれた…

妊婦さんの新型コロナワクチン接種 - 日本でもアメリカでも、専門家は強く推奨しています。

本来の私の専門である出生前診断に関して、記事にしたいことはいくつかあるのですが、新型コロナウイルスの流行状況と医療の現状が、たいへんなことになってきました。ワクチン接種が多くの医療関係者や行政機関の努力によって進んでいるのですが、最近、接…

当院は、妊婦さんファースト。どこで検査をお受けになった方でも、対応いたします。

前記事では、いわゆる“無認可”NIPT検査施設について書きましたが、けっこう反響をいただきました。それでふと思い出したんですが、以前にも同様の記事を書いてアップしたところ、どうも私が“無認可”NIPT検査を批判しているので、そういう検査を受けた妊婦さ…

無認可NIPT施設は、誰のために検査を行なっているのか。

このところブログの更新の進みが悪く、またしばらくぶりとなってしまいました。実は、NIPTを含む出生前検査の新たなしくみを厚生労働省主導で作ろうとしている件に関して執筆していたのですが、22年前の厚生省課長通知のあたりから振り返っていろいろ頭を整…

「どんな子でもきちんと産んで育てたい。」と考えている人にとって、「出生前検査は受けない。」という方針は、はたして正しい選択なのだろうか。

当院での超音波検査の質と、カウンセリング体制、医療連携への取り組みをご評価いただいて、いろいろな医療機関から診療依頼がくることは、たいへん嬉しいことです。地道に続けてきたことが、大学病院を含む多くの施設のお医者さん達から、高くご評価いただ…

「出生前検査に対する見解・支援体制について」課長通知が各自治体宛に発出されました。

6月9日付で、厚生労働省子ども家庭局母子保健課長および社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長名で、各自治体(都道府県、市町村、特別区)母子保健主管部(局)長および障害保健福祉主管部(局)長宛に、「出生前検査に対する見解・支援体制について」(…

日本の妊婦さんにもっと知ってほしい事実2:切迫流産と流産とはほとんど関係がない!?

出生前検査・診断についての思いが強すぎて、そういう話題ばかり書いてきましたが、産科医として気になっているこの国の妊婦診療の問題は、他にもあるのです。そういうものも取り上げていきたいと思います。 当院では、以前より妊娠初期の胎児超音波検査を国…

『妊婦の不安や悩みに寄り添う適切な遺伝カウンセリング』への違和感

前記事で、遺伝カウンセリングの捉えられ方に関連して、次回記事にすると予告していました。最近、気になった受診者さんの発言もあり、少し整理してみたいと思います。 前記事では、厚労省の専門委員会でまとめられた文書に、「日本産科婦人科学会の指針に定…

『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書』を読んで ー その1

2021年5月19日、第121回厚生科学審議会科学技術部会が開催されました。審議事項の議題3として、「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」の報告書について議論されました。 この会議の資料として、議題3については、以下の二つの資料が提出されています。 …

NIPT実施施設の認定基準は再考が必要:認定施設と認定外の施設との違いは、遺伝カウンセリング体制にあるという自己満足はやめるべき

GWは、新型コロナウイルス蔓延の件で頭がいっぱいで、本業への集中力さえ削がれかねない心理的状態です。そんな中でも、妊娠・出産に臨む人は確実に存在するし、なんとかこの事態を乗り越えて、元気な赤ちゃんを産んでほしいと心より願っています。 ただでさ…

日本の妊婦さんにもっと知ってほしい事実1:妊娠初期の胎児超音波検査について

GW真っ只中、2年連続でステイホームの毎日です。 仕事がらみでやらねばならないことはいっぱいあるのですが、連休まで仕事がらみのことはあまりやる気が起こらない。でもせっかくステイホームなんだから、時間を有効に使いたい。。。。常に仕事のことが頭を…

妊娠と新型コロナワクチン:妊婦さんへの接種が推奨されるようになりました。

いろいろとやらねばならないことを抱えていて、しばらくブログの更新が滞っていましたので、久しぶりの記事です。テーマも久しぶりの新型コロナ関連です。 世界からかなり遅れをとってしまいましたが、ようやく日本でもワクチン接種が進みつつある状況になっ…

妊婦への情報提供の問題 つづき

前記事からの続きです。 1. 情報を伝える側が伝えるべきと考えていることと、妊婦さんやその家族が知りたいこととの間にズレがあるのではないかという問題 2. 産科診療現場における対応の問題 について、考察していきます。 伝えるべき情報は何か NIPTの問題…

全ての妊婦に情報提供するという方針、誰が何をどう伝えるかが課題。

ずっと注目している厚労省の専門委員会の経過ですが、どうやら今月末を目処に何らかの方向性が示されるとの情報が入ってきています。この情報がいろいろな人たちにも伝わっているようで、マスコミ関係の取材依頼が複数届きました。それで少し考えたことを記…

出生前検査に係る検査実施体制の厚労省案。周産期医療機関がその担い手であるべきなのか?

以前から引っかかっていたことなのですが、出生前検査の担い手を考える場合に、何かというと一施設に多職種が揃っているというイメージで、周産期医療施設が適切という考えが出てきます。本当にそうなのでしょうか? 周産期センターのような総合的施設なら、…

いま一度再掲します。『NIPTのよりよいあり方に関する提言』

前記事で予告しましたが、厚生労働省の第5回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会で、いろいろな立場の委員の方々が資料を提出され発表される中、柘植あづみ委員のご発表がたいへん重要な内容であると感じられました。ここで示された提言は、以前にブログで…

出生前検査に関する専門委員会。国の方針は?

2021年3月17日、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の第5回が開催されました。 資料が公開されています。 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第5回)の資料について ZOOMで会議を視聴することができましたが、ここへきてようやくまとまりつつあるよ…

いよいよ国が動くことになった出生前検査

今週はじめに、ニュースが飛び込んできました。 ↑残念ながらリンクが切れてしまったようなので、画像だけ貼り付けました このニュース、それなりの反響があり、画期的な変化だという声が聞こえてきていたのですが、まあ確かに20年ぶり方針転換というとそれは…

『内なる優生思想』批判と、『中絶は罪』だと規定する思想

タイトルが違いますが、前記事の続きのようなものです。 前記事で次に書きますと予告した部分について、まずはちゃんと述べる必要がありますね。 内なる優生思想について ・NIPTが優生思想を助長するのではないかという危惧、障害者とともに生きる社会の実現…

理想を語る小児科医たちの危惧が、世間の妊娠年齢の人たちにどの程度伝わるだろうか。ー第12回日本小児科学会倫理委員会公開フォーラムに参加して

3月6日7日の土日に2つのイベントがありました。(私たちが行っている医師対象の勉強会「FMC川瀧塾」(日曜午前)も加えると3つのイベントになります) 土曜の午後は、第4回新生児生命倫理研究会、そして日曜の午後は、第12回日本小児科学会倫理委員会公開フ…

医師の中に遺伝学的検査の必要性の認識が甘い人や検査結果解釈能力の低い人がいる!?

染色体検査などの遺伝学的検査への消極的態度について考える記事を続けてきました。その裏にある心理や考えを探ってきたわけですが、それ以前に、どうもそういった検査の必要性の認識が甘い医師や、解釈のための知識レベル自体が低い医師がいるのではないか…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その3

検査を希望したら医師に叱責されたという事例に遭遇することが多々あります。実際の事例を参考にしつつ、考えていきたいと思います。 出生前検査・診断の現場では、障碍をもちつつ生活を続けている人々が差別を受けることなく生きられる社会にしなければなら…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その2

前記事では、産科・妊婦診療の現場における検査忌避の状況について書きましたが、今回は小児科の現場で経験される話に言及したいと思います。 次子再発の懸念にどう対応するか 当院に検査の相談で来院される方の中に、病気や障碍を持つお子さんを育てておら…

なるべく検査を行わないように誘導する心理は、どこから来るのだろうか。その1

出生前診断に関わっている中で、よくある相談として、かかりつけ医が検査に否定的という話があります。比較的多いのは、検査そのものの話すら拒否するような態度や、検査の相談をしたら諌められたというような話ですが、もっと具体的な、検査方法はそこにあ…

出生前検査 まずこの国の後進性をなんとかしないとダメ

2021年になって、新年早々にNIPT等の…専門委員会が開催されたこともあり、出生前検査関連の記事ばかりが連続しています(まあそもそもそれがこのブログのメインテーマではあるわけです)が、その流れで続けます。最近もこんなケースがあったというものを紹介…

専門委員会についての追記 事件は現場で起きているんだ

先々週の『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会』に関連して、資料をもとに論考を加えてきましたが、この時に公開されていた議論の内容について、少し補足することができましたので、ツッコミを入れていきたいと思います。 規制ありきで考えるべきではない…