FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

NIPTを実施する医療機関として認証を受けるための申請を行います。

ずっとシリーズで記事を書いてきた、出生前検査等認証制度等運営委員会のNIPT認証施設認定。私たちのクリニックも、いよいよ申請を行う運びとなりました。現在、書類の作成に追われています。

 NIPT実施医療機関としての認定を受ける申請は、実は私たちとしては2回目なんです。

 前回は、2018年7月でした。この時の顛末は、以下の二つの記事として書いています。

これはクリスマスプレゼントなんでしょうか?「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会より文書が届きました。 - FMC東京 院長室

 

【全文公開】「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会宛に返答を送付しました。 - FMC東京 院長室

 

まあ正直この時は、もともと認定は受けられないだろうなと思いつつ、いかにこの施設認定に問題があるのかについて、白日の元に晒したい、問題点について世間の人たちにもわかってもらいたい。という気持ちと、このままではいつまで経っても私たちが堂々とNIPTを行うことはできないだろうから、自分たちの正当性を主張し、増えつつあった美容外科や内科医などが扱ういわゆる”野良NIPT”との違いを明確にして、NIPTを行うことができない立場にある専門家を結集して新たなNIPT実施グループで検査を行う道を探ろうという計画を持って、徒労とも思えるような申請を行ったのでした。実際、私たちの反論に対する回答も、木で鼻を括ったようなもので納得のいくようなものではなかったので、腹を括るしかないという気持ちになったのですが、ちょうど同時期に、日本産科婦人科学会の暴走をきっかけとして国が動くことになったため、もうしばらく我慢をして様子を見ることにしたのが、2020年の初頭でした。

 

コロナ流行と野良NIPTの台頭でダブルパンチ

 

 しかし、ここからがキツかった。何しろ大手を振ってNIPTをオフィシャルに認められる立場で実施できるようになるのか否かの保証もない宙ぶらりんな状態で、延々待たされている。その間、野良NIPTの増加は勢いを増し、日本の出生前検査はひどい状況になりました。同時に、新型コロナウイルスの世界的流行の波がやってきて、妊婦の数は減り、人の移動は制限され、わざわざかかりつけではない東京のクリニックまで足を伸ばそうという人はかなり減りました。当院は存続の危機に陥りました。そんな中でも、出生前検査・診断については、やっと国が重い腰をあげたんだから、私たちは専門家として堂々と実施するのだという思いだけで、なんとか凌いできました。

 

いよいよNIPTの実施が現実的に

 

 さて、いよいよ私たちにも申請の時がやってきました。NIPT実施医療機関(連携施設)としての申請です。

 おそらく、これから申請を行うどこの施設よりも、出生前検査に関わる人員の質と量、診療実績、診療以外の活動などの点で、当院は突出した存在だと思います。それどころか、おそらく少し前にすでに承認を終えてこの7月から実施が始まっている基幹施設でさえ、当院と比較してはるかに脆弱な体制のところは多いことでしょう。きちんとした体制でしっかりと検査を実施し、その後のフォローアップも含めて対応していける自信があります。実際、NIPTだけ自院で扱うことができない状態であっただけで、他院で行ったNIPTの結果を受けて専門的対処が必要になった場合の対応など、時には今回基幹施設となった旧認定施設からも頼られる存在として活動を続けてきたことは、多くの専門家もご存知のことと思いますし、このブログを読んでいただいている方々にもお分かりいただけていることと思います。

 今後の流れは、7月22日までに申請書類を送り、承認が得られた暁には、10月よりNIPTを当院でも実施できる運びです。

 いよいよ当院が、出生前検査の専門施設として全てを網羅できる施設となります。これは長年の悲願でした。(本来なら初めからこれが当たり前の形だと思うんです。そうならなかったことについては、忸怩たる思いがあります)

 

本質をついたディベートプログラム

 

 私は、10月からNIPTを実際に行うことができるようになったとしても、この検査をオフィシャルに扱う事のできる施設として、「お上から認証いただいた。」というような気分にはなりません。以前からこのブログで何度か言及してきているように、そもそもこの検査のみが認証制度で制限されるという形自体が、正しい方向に進んでいないやり方だと感じています。今後も問題提起を続けていきたいと考えています。

 手始めとして、来たる9月2日〜4日に仙台で開催される、「第44回日本母体胎児医学会学術集会」の特別企画ディベートプログラムの一つとして、「NIPTの認証基準は必要か否か?」というテーマが設定されており、これに演者として登壇を予定しています。承認申請を行っている最中の立場で、いささかチャレンジングであると感じますが、忌憚のない意見を述べて来たいと考えています。

 ルールには従う。しかし、ルールを絶対視せず、ルールに問題点があればルール自体が改善できるように動く。言われたままに従順に行動するつもりはありません。まだ思春期の頃、校則に縛られつつ、そのおかしな点について常に問題視して変えられるものは変えなければならないと考え、行動してきた気持ちを、常に持ち続けていたいと考えています。