FMC東京 院長室

                                                                  遺伝カウンセリングと胎児検査・診断に特化したクリニック『FMC東京クリニック』の院長が、出生前検査・診断と妊婦/胎児の診療に関する話題に関連して、日々思うことを綴ります。詳しい診療内容については、クリニックのホームページをご覧ください。

NIPT

2022年は、出生前診断元年になったのか?

あっという間に2023年の1月が過ぎ去ってしまいました。ブログ記事を一つも書かないうちに、もう2月になって焦っています。 昨年の10月からNIPTをやれるようになって、それまで「NIPTやれない問題」と対峙して、なんとか壁を乗り越えよう、鍵をこじ開けようと…

NIPT開始後 1ヶ月が経過しました。

NIPTを開始して1ヶ月を経過しました。 開始したことで受診者がどっと増えたかというとそんなことはなくて、正直ぼちぼちでんなあという印象。 おそらく何年か前だったらもう少し手応えがあったんじゃないかと思うんですが、何しろ東京は無認証クリニック花盛…

日本母体胎児学会ディベート「NIPTの認定基準は必要か否か」に登壇しました。

先週末の3日間、第44回日本母体胎児学会学術集会が仙台で開催され、久々に現地参加してきました。 学術集会全体のテーマが、「Controversies in Obstetrics」というもので、現在産科領域のなかで議論の対象となる6つのテーマについて、対立する立場からの主…

NIPTを実施する医療機関として認証を受けるための申請を行います。

ずっとシリーズで記事を書いてきた、出生前検査等認証制度等運営委員会のNIPT認証施設認定。私たちのクリニックも、いよいよ申請を行う運びとなりました。現在、書類の作成に追われています。 NIPT実施医療機関としての認定を受ける申請は、実は私たちとして…

出生前検査認証制度等運営委員会が、医療機関(基幹施設)と検査分析機関を認証したことを発表しました。

いろいろドタバタしていたところ、前回記事から2ヵ月が経過していました。 この間、学会発表やウィメンズヘルスリテラシー協会のオンライン講座での講演など、活動を続けていました。 『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む5 いろいろと気になる内容 

『指針を読む』シリーズを続けてきましたが、正直のところ真面目に取り組めば取り組むほど、指針を読み込めば読み込むほど、問題点が見えてきて、本当にこれでいいのか、この国の出生前検査は良い方向に向かっているのかと考えると、悩ましい限りです。 この…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む4 事前に何を伝えるべきか

いろいろと忙しくしていてブログ更新ができていないうちに、NIPT施設認証の申請が開始されましたね。まずは、基幹施設と検査分析機関の認証からです。申請期間は4月22日までで、6月上旬に審査結果が公表される予定です。連携施設の申請受付はそれからなので…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む3 『基本的な考え方』を見直す

今回のテーマが、すごく重要な部分になると考えています。なにしろ、出生前の検査についての『基本的な考え方』、根本のところに切り込む作業になるからです。 出生前検査・診断について常々言われることは、それが「倫理的な問題」につながるということです…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む2 はじめに

発表された『指針』を読みつつ、気になる点について指摘していきたいと思います。 なお、この『指針』は、いきなり『指針』として出てきたもので、(案)ではありません。パブリックコメントを募集するなどの手続きは省略され、はじめから決まったものとして…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』を読む

2月18日に出された、『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』について、内容を検証していきたいと思います。 まず全体を通して、指針に記載されている内容の基本は、過去の指針を踏襲している部分が多々あると…

『NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針』が公表されました。

2022年1月31日に、日本医学会第2回出生前検査認証制度等運営委員会が開催され、2月18日に、「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」が公表されました。 早速この内容を確認しましたが、今回の指針でNIPTを行う…

年頭所感2022 今年を出生前検査元年にできるか

新年が明けてもう10日以上経ってしまいました。 ブログの更新が滞っています。じつは先日すでに3200文字の年頭所感の原稿を書き上げて、あとは「公開する」のボタンをクリックするだけの状態だったのですが、一歩前で踏みとどまり、全面的に修正することにし…

「羊水検査で確定しないと中絶できません。」という方針、矛盾しているんじゃないですか?

出生前検査・診断の現場で、妊婦さんが直面する最も大きな問題は、『検査陽性』という結果を受け取った時に、妊娠を継続して出産を目指すのか、中絶を選択するのかの判断・選択でしょう。とくに、NIPTの場合、その結果は確定診断ではないけれど、検査精度は…

なぜ決まったルートを外れると中絶を扱ってくれないのか。

このブログで何度も取り上げている、NIPTの問題。厚生労働省の専門家会議が今年3月に終了し、半年が経過したのですが、その後の動きはどうなっているのでしょうか。厚労省のホームページをみると、5月24日に報告書が公開されています。NIPTについて、どのよ…

当院は、妊婦さんファースト。どこで検査をお受けになった方でも、対応いたします。

前記事では、いわゆる“無認可”NIPT検査施設について書きましたが、けっこう反響をいただきました。それでふと思い出したんですが、以前にも同様の記事を書いてアップしたところ、どうも私が“無認可”NIPT検査を批判しているので、そういう検査を受けた妊婦さ…

無認可NIPT施設は、誰のために検査を行なっているのか。

このところブログの更新の進みが悪く、またしばらくぶりとなってしまいました。実は、NIPTを含む出生前検査の新たなしくみを厚生労働省主導で作ろうとしている件に関して執筆していたのですが、22年前の厚生省課長通知のあたりから振り返っていろいろ頭を整…

「出生前検査に対する見解・支援体制について」課長通知が各自治体宛に発出されました。

6月9日付で、厚生労働省子ども家庭局母子保健課長および社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長名で、各自治体(都道府県、市町村、特別区)母子保健主管部(局)長および障害保健福祉主管部(局)長宛に、「出生前検査に対する見解・支援体制について」(…

『妊婦の不安や悩みに寄り添う適切な遺伝カウンセリング』への違和感

前記事で、遺伝カウンセリングの捉えられ方に関連して、次回記事にすると予告していました。最近、気になった受診者さんの発言もあり、少し整理してみたいと思います。 前記事では、厚労省の専門委員会でまとめられた文書に、「日本産科婦人科学会の指針に定…

『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書』を読んで ー その1

2021年5月19日、第121回厚生科学審議会科学技術部会が開催されました。審議事項の議題3として、「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」の報告書について議論されました。 この会議の資料として、議題3については、以下の二つの資料が提出されています。 …

NIPT実施施設の認定基準は再考が必要:認定施設と認定外の施設との違いは、遺伝カウンセリング体制にあるという自己満足はやめるべき

GWは、新型コロナウイルス蔓延の件で頭がいっぱいで、本業への集中力さえ削がれかねない心理的状態です。そんな中でも、妊娠・出産に臨む人は確実に存在するし、なんとかこの事態を乗り越えて、元気な赤ちゃんを産んでほしいと心より願っています。 ただでさ…

妊婦への情報提供の問題 つづき

前記事からの続きです。 1. 情報を伝える側が伝えるべきと考えていることと、妊婦さんやその家族が知りたいこととの間にズレがあるのではないかという問題 2. 産科診療現場における対応の問題 について、考察していきます。 伝えるべき情報は何か NIPTの問題…

全ての妊婦に情報提供するという方針、誰が何をどう伝えるかが課題。

ずっと注目している厚労省の専門委員会の経過ですが、どうやら今月末を目処に何らかの方向性が示されるとの情報が入ってきています。この情報がいろいろな人たちにも伝わっているようで、マスコミ関係の取材依頼が複数届きました。それで少し考えたことを記…

出生前検査に係る検査実施体制の厚労省案。周産期医療機関がその担い手であるべきなのか?

以前から引っかかっていたことなのですが、出生前検査の担い手を考える場合に、何かというと一施設に多職種が揃っているというイメージで、周産期医療施設が適切という考えが出てきます。本当にそうなのでしょうか? 周産期センターのような総合的施設なら、…

いま一度再掲します。『NIPTのよりよいあり方に関する提言』

前記事で予告しましたが、厚生労働省の第5回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会で、いろいろな立場の委員の方々が資料を提出され発表される中、柘植あづみ委員のご発表がたいへん重要な内容であると感じられました。ここで示された提言は、以前にブログで…

出生前検査に関する専門委員会。国の方針は?

2021年3月17日、NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の第5回が開催されました。 資料が公開されています。 NIPT等の出生前検査に関する専門委員会(第5回)の資料について ZOOMで会議を視聴することができましたが、ここへきてようやくまとまりつつあるよ…

いよいよ国が動くことになった出生前検査

今週はじめに、ニュースが飛び込んできました。 ↑残念ながらリンクが切れてしまったようなので、画像だけ貼り付けました このニュース、それなりの反響があり、画期的な変化だという声が聞こえてきていたのですが、まあ確かに20年ぶり方針転換というとそれは…

出生前検査 まずこの国の後進性をなんとかしないとダメ

2021年になって、新年早々にNIPT等の…専門委員会が開催されたこともあり、出生前検査関連の記事ばかりが連続しています(まあそもそもそれがこのブログのメインテーマではあるわけです)が、その流れで続けます。最近もこんなケースがあったというものを紹介…

専門委員会についての追記 事件は現場で起きているんだ

先々週の『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会』に関連して、資料をもとに論考を加えてきましたが、この時に公開されていた議論の内容について、少し補足することができましたので、ツッコミを入れていきたいと思います。 規制ありきで考えるべきではない…

遺伝カウンセリングという名の、お説教。

遺伝カウンセリングが重要というけれど、その『遺伝カウンセリング』と称されているもの自体の質は統一されているのでしょうか。学会認定施設ならどこでも、同じようにきちんとした遺伝カウンセリングを受けることができるのでしょうか。受診者さん達からい…

NIPTの『質』ってなに?それを担保するにはなにが必要と考えられているの?

先日行われた『NIPT等の出生前検査に関する専門委員会』、これまで4回にわたって会議が開催されてきました。そんな中で、論点整理が進められ、これに基づいた一定の結論が、あと2回の会議ののちに出される予定と聞いています。しかし、この論点整理によって…