世の中、新型コロナの話題で持ちきりで、厚生労働省もこれにテンテコ舞いなことと思いますが、NIPT方面はどうなってるんでしょうかねえ。
まあ調査が行われているようなんですが、これがどれほど有効なものなのか、結局どういう結論に持っていきたいのか、大いに疑問視しています。
先日も、室月淳×河合香織「出生前診断-選ぶ・選ばない・選べない」
『出生前診断の現場から 専門医が考える「命の選択」』(集英社新書)刊行記念イベントに参加して、議論した後、いろいろ考えていたんですが、本当にこの国の現状は『鎖国』そのものだと感じるのです。
昨年末に届いたクリスマスプレゼントに対して、年明け早々に返答および質問をお送りしたのですが、まだ返事が来ません。またもや無視されてしまうのでしょうか。
この件、他の施設はどうなっているのかと思い、同時期に同じ文面の文書が届いた某大学病院の状況を聞いてみたところ、やはり返事がないということでした。私たちだけが放置されているわけではなかったのですね。それにしても、「回答後、直ちに迅速に審査する予定です。」と書いてある割には、遅いですねえ。このスピード感、なんなんでしょうか。
最近、当院を受診される方は、「すでにNIPTを受けてきました。」という方がどんどん増加しています。そりゃあそうでしょう。出生前の検査を検討している方ならば、普通これを選択しますよ。そして、多くの方が、認可施設どころか産婦人科ですらないクリニックで受けて来られるのです。
そんな中、新たな情報が入ってきました。これまで埼玉県方面で認可外でNIPTを行っていた某クリニックが、東京駅前に新たに分院を開設したようなんです。そしてこの分院、なんとNIPT専門です。そりゃそうですよねえ、NIPTはただ採血さえすればよく、あとは検査会社が検査を行なって結果を出してくれるのです。採血要員がいれば医師は何もやる事がありません。いなければ医師が採血すれば、人件費も抑えられます。医師はお飾りでも良いのです。
それでこのクリニックのホームページを見てみると、ブログがあって、妊娠関連の記事が並んでいるんですが、これがまたなんとも内容の浅いもので、妊婦さん向けの医師が監修したアドバイスのような体裁なんですが、適当にいろいろなところから妊娠関連の話題を拾ってきて、最後はNIPTに結びつけるという強引な展開。より多く検索に引っかかるようにやってるんでしょうけど、そもそも産婦人科の医師がやってるわけではないので、内容は無茶苦茶だったりします。たとえば、『妊娠中のストレスによる胎児への影響』という記事があるんですが、この内容たるや、本当に適当に思いつきで書いたとしか思えないようなもので、出典として挙げてあるものに当たってみたところ、専門家の書いたものですらなく、よくわからない情報サイトからのまるパクリだったりします。そしてここで胎児への影響として列挙されているものが、1. 胎児への栄養供給、2. 早産や流産のリスク、3. 子宮が狭くなる、となっていて、もうクラクラします。でも立派な大学を出た医学博士が監修しているというだけで、妊婦さんたちは信じてしまう人もいるんじゃないでしょうか。『胎児のへその緒から栄養が届きにくくなり、早産や流産してしまう可能性があります』って、どういう機序なんだそれ!こういうガセネタを垂れ流しても、罪を問われるわけではないので、やりたい放題です。
もう本当にイヤになってきました。私たちはいつまで我慢しなければならないのでしょうか。堪忍袋の緒が切れそうです。こんな状況を放置して、それでも学会の指針に従って、検討会の結論が出るまで待てというのか。
キレますよ、ホントにそのうち。おそらく待っていても仕方がないなとわかってきました。本当は冷静に議論したいんですが、議論にもならないズレ具合だということも、これまでのいくつかの経験で感じられるようになりました。検査の普及に反対する人たちは、まともな意見を言っているようで、実は思い込みに基づいた感情に訴えるようなことしか言っていない人が多いこともわかりました。何も前向きに進める気がない人たちが強い影響力を持っていたりすることも感じました。今は本当に閉塞感しかありません。
もう3月にな離、省庁の仕事は年度単位なんじゃないかと気になっているのですが、どうなんでしょうかねえ。何らかの結論が出てくるまでは待とうかなとは思ってるんですけどねえ。いつ出るのか。。。。
ところで、今、妊娠中の人たちは、新型コロナウイルスのことで、心配されている方が多いことと思います。本来はこのブログでもこの件に関して情報発信をするべきだとは思うのですが、これについてはクリニックのFacebookページで発信しています。少しでも参考になれば幸いです。
この中でも触れている、東邦大学産科婦人科の中田雅彦教授のブログ記事も貼っておきます。