FMC東京 院長室

FMC東京クリニック 院長のブログです

たいへん勉強になりました。世界産科婦人科超音波学会。ー これからの超音波検査はどうなっていくのか。

ウィーンで開催されていた世界産科婦人科超音波学会、本日が最終日でした。いつもながら刺激的な学会で、世界のエキスパートが出してくる超音波画像の素晴らしさは、目を見張るものでした。診断専門施設を運営する立場としては、同等のレベルを実現し、且つ保っていかなければならないと痛感しています。

私たちがメインの仕事としている妊娠初期の精密超音波検査。わが国ではほとんど普及してきませんでしたが、他の先進諸国では基本的な検査として、幅広く導入されています。しかし、ここ数年でその考え方、扱いは変化してきました。

何よりも大きかったのは、日本では「新型出生前検査」と一般的には言われている、NIPTの導入です。もともと、妊娠初期におけるNT計測を中心に据えた超音波検査は、染色体異常、とりわけトリソミー(その代表的なものがダウン症候群)の早期検出がその主な目的として開発されてきました。そこにNIPTが出現して、この目的での超音波検査の意義が少なくなったのです。NIPTがあるんだから、妊娠初期に一所懸命NT計測を行う意義は薄れるのではないかという考えが出てきました。

私たち自身、染色体異常の有無に関わらず、胎児の異常について詳しい観察を行うとするなら、妊娠中期の超音波検査に大きな意義があると考えてきましたし、すでにNIPTを受けた方や、受けることが決まっている方には、妊娠中期の超音波検査をお勧めしてきました。

NIPT時代の妊娠初期超音波検査はどうなるのか、この話題は少し前からよく語られるようになっており、私たちもよく話題にしていたのですが、結論的にはこの時期の超音波検査の意義は薄れないということが明確になってきたようです。

もちろん、これまでのようにトリソミーを検出するという点については、その役割はNIPTに譲る部分が大きくなることは間違いありません。しかし、NIPTも確定診断ではありません。ごく少ないながらも、NIPTでは偽陰性であったものが超音波検査でわずかな所見が見つかって、確定診断に進んでトリソミーが判明することもあります。また経済面から見て、NIPTの前段階の選別方法として超音波検査を利用する意義もあります。

しかしそれ以上に重要なことは、NIPTが対象としている染色体の数的異常以外に、もっと様々な胎児の異常、それも重篤な症状を呈するものがより多く存在することです。染色体の微細な欠失や、染色体レベルでは異常が見つからなくても、遺伝子レベルの変異が原因となるものが、数も種類もたいへん多く、そういったものを早期に発見するためのツールとしては、今のところやはり超音波検査にアドバンテージがあります。そして、超音波診断装置と診断技術の進歩は、胎児の様々な異常を見つけるための検査時期を、妊娠中期から妊娠初期へとシフトして行くことに繋がりました。NIPTさえ受けていれば安心で、あとはわずかな問題を対象に妊娠中期に超音波検査を行えば良い(日本ではこれすらまともに行われていないことが多いのですが)という考えは、古いものになりつつあります。

もちろん、まだ小さい妊娠初期の胎児を対象とした検査には、限界もあります。全ての問題が見つかるわけではないし、何か気になる所見があったとしても、はっきりとした診断には必ずしも繋がらないことが多々あります。いたずらに不安を煽るだけの結果になってしまう危惧もあるでしょう。診断がはっきりしないのに妊娠中絶の選択につながってしまう恐れから、検査に反対したり消極的な姿勢になる医師もいることでしょう。しかし、そういった問題があるとしても、この時期の検査技術の進歩が止まるわけではありません。検査そのものを否定するのではなく、そこで起こってくる新たな問題にどう対処すれば進歩を生かすことが可能になるのかを考えるべきでしょう。

私はこういった問題に向き合うためにはやはり、検査前後のカウンセリング体制の充実が必要であろうと考えます。私たちのクリニックにおいて、超音波検査を担当する医師がより詳細な所見の発見に邁進できるのも、その前提となる検査前の情報提供と同意、そして検査結果を受けてのカウンセリングの体制がしっかりしたものであるからに他なりません。

当クリニックでは、NIPTを受けた、あるいはこれから受ける方に対して、それなら超音波検査は中期にというのではなく、妊娠初期の段階から詳細な観察を行う新しいメニューを加えることを検討しています。具体的な手順が固まったら実行に移す予定です。